裏口入学

 最近,ニュースで裏口入学が話題になりました。

 

 

文部科学省の前局長が息子を東京医科大学へ入学させたという事件です。

この件で,前局長は受託収賄罪で起訴され,大学の前理事長と前学長が贈賄で起訴されました。

 

 

この事件の特徴は,文部科学省の役人が大学側へ「私立大学研究ブランディング事業」に選定されるための助言を行うという「便宜」を図ることの見返りに,息子を不正に入学させたという容疑だという点です。

 

 

文部科学省の役人は公務員であり,公務員が職務に関連して賄賂をもらうと収賄罪が成立します(刑法197条)。

 

 

ここで注意しなければいけないのは,「裏口入学」そのものが犯罪だというわけではないという点です。

 

 

この事件は,あくまで「贈収賄」という刑事事件の話です。

仮に,この文科省の役人が大学に有利になるように「便宜を図り」,その見返りに「高級車」をもらっても,やはり受託収賄罪です。

「見返り」が「裏口入学」だから犯罪なのではありません。

 

 

つまり,収賄罪がなぜ犯罪なのかというと,公務員が職務に関連して金品などを受け取ると,公平であるべき行政が歪められてしまうからです。

 

 

受け取るものが「裏口入学」であっても「高級車」であっても「現金」であっても,行政が歪められることが問題なのです。

 

 

これに対し,民間人が私立大学に金銭を渡して子どもを「裏口入学」させても,「行政が歪められる」ことはありませんので,それは「賄賂」とは言わず,犯罪になりません。

 

 

ところで,今回のニュースの事件とは逆に,民間人が国公立大学に金銭(金銭でなくても良いのですが)を渡して子どもを「裏口入学」させると,犯罪になります。

 

 

国公立大学の教職員は「みなし公務員」といって,公務員とみなされており,この場合,「公務員」が金銭等の「賄賂」をもらって,「裏口入学」という「便宜」を図ることになり,「国公立大学の行政が歪められる」からです。

 

遺産の範囲の争い

遺産分割について,当事者の間で話し合いがまとまらない場合は「家庭裁判所」に「遺産分割調停」を申し立てることができます。

そして,「調停」は話し合いですから,「調停」がまとまらない場合は,「審判」といって「家庭裁判所」の裁判官が遺産の分け方を決定します。

 

 

では,そもそも,「遺産の範囲」に争いがある場合はどうなるでしょうか。

 

 

例えば「名義預金」というものがあります。

「名義預金」とは,「他人の名義を借りている預金」という意味です。

つまり,名義は他人だけれども,自分の預金ということです。

 

 

子どもの将来のために,子どもに黙って「子どもの名義」で預金することがあります。これが「名義預金」です。名義は子どもですが,法律的には親のお金です。

 

 

他にも,「税金対策」として自分のお金を「子どもの名義」で預金する場合があります。これも「名義預金」です。

 

 

今,説明した「名義預金」などが「遺産の範囲」についての争いになることがあります。

 

 

すなわち,親が亡くなって,「名義預金」らしい預金が1億円あったとします。そして,子どもが2人いて長男と二男とします。

「長男名義」で8000万円の預金があり,「二男名義」で2000万円の預金があったとします。

 

 

この場合,長男と二男が,「全部『名義預金』だから親の遺産だよね。」ということで,「親の遺産1億円」を5000万円ずつ分ければ問題はありません。

 

 

しかし,長男が,「8000万円は元々俺の金で,2000万円は元々弟の金だ。つまり遺産はない。」と言い出すかもしれませんね。

 

 

この場合,遺産は「1億円」なのか「ない」のか,「遺産の範囲」に争いがあるわけです。

 

 

そして,このように「遺産の範囲」に争いがある場合は,まず,「遺産の範囲」を確定するために「地方裁判所」で裁判を起こす必要があります。

 

 

初めに,遺産の分け方が決まらない場合は,「家庭裁判所」で遺産の分け方を決定する,と述べました。

しかし,「遺産の範囲」を確定するためには,「地方裁判所」で裁判をする必要があります。

 

 

なぜ,そうなるかについては,またの機会にお話ししたいと思います。

今回は,遺産の問題は「家庭裁判所」で審理することもあれば「地方裁判所」で審理することもある,ということを覚えておいてください。

 

 

なお,今回,「税金対策として子どもの名義で預金する」という話が出てきますが,「税金対策」として子どもの名義にする場合は注意が必要です。「税金対策」については信頼できる税理士さんにご相談いただくようにお願いいたします。

 

GPS捜査

千葉地裁で,令状有りのGPS捜査の裁判が行われており,話題になっています。

 

 

GPSというのは,人工衛星を利用して位置を測定するシステムです。カーナビを初め,スマホアプリでもよく利用されています。

 

 

GPS捜査というのは,GPSを利用して,捜査対象者が使う車などに端末を取り付けて,その車の位置や移動経路などを測定する捜査です。

 

 

GPS捜査については,昨年3月15日に,最高裁が「令状なしのGPS捜査は違法」という初の判断を下しました。

今,話題になっている千葉地裁の裁判というのは,「令状ありのGPS捜査」が適法かどうかが問題となっています。

 

 

この話をするためには,「令状とは何か,なぜ令状が必要か」についてお話しする必要があります。

 

 

令状というのは,逮捕令状や捜索差押令状などのことです。

 

 

刑事ドラマでは,令状を持たずに人の家に入って,あとで上司に叱られる刑事がいますね。

警察のような国家権力でも令状なしに個人の私的領域(プライバシー)に侵入することは許されません。

 

 

なぜ,令状なしに個人の私的領域に侵入してはいけないのでしょうか。それは,憲法で規定されているからです。

憲法とは,国家権力を縛るためのものでしたね。

憲法は国家権力が個人の私的領域にむやみに侵入することを禁止しているのです(憲法35条)。

 

 

そして,具体的な令状の種類などは刑事訴訟法に規定されています。

 

 

最高裁の話に戻します。

最高裁で問題になったのは,GPS捜査は強制捜査か任意捜査かという点です。

任意捜査というのは,一例を挙げれば,尾行とか張り込みです。

 

 

実は,任意捜査には令状が要りません。

 

 

さきほど,憲法の話で,「国家権力がむやみに個人の私的領域に侵入してはいけない」という話をしましたが,尾行は,外を歩いたり外で車を運転したりする行動を付ける行為ですね。

 

 

外を歩いたり,車に乗って外出する場合,他人に顔を見られたり,車のナンバーを見られたりします。

それを承知の上で,人は外出しています。

 

 

ですから,外での行動は基本的に「私的領域ではない」と考えられていて,任意捜査であり令状は要らないということになっています。

 

 

では,GPS捜査は強制捜査なのか任意捜査なのか。

車での行動を追跡するものなので任意捜査ではないか,とも思われます。

実際,警察側は「尾行や張り込みと一緒で,任意捜査である。」という主張をしていました。

 

 

これに対して,最高裁は,GPS捜査は「公道だけでなく,個人の行動を継続的,網羅的に把握することができる」,「合理的に推認される個人の意思に反して私的領域に侵入する捜査手法である」と述べて,強制捜査であると判断しました。

 

 

したがって,強制捜査ですから令状が必要ということになります。

 

 

さらに,最高裁は,もう一歩踏み込んで,現在の刑事訴訟法で定められている種類の令状でGPS捜査を行うことには疑問がある,とまで述べています。

 

 

今ある種類の令状ではGPS捜査を行うことは困難であり,新たな立法が必要だとの考えを述べたのです。

 

 

今回の千葉地裁の裁判は,その最高裁判決後の後で,「令状がある」GPS捜査がどう判断されるか,という点で注目されているのです。

 

 

判決は,今年の8月30日の予定です。

 

遺産分割の方法

遺産の分割の方法としては,4種類あります。

「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つです。それぞれ,メリットとデメリットがあります。

 

 

「現物分割」とは,遺産の現状をそのままの状態で分割することです。

例えば,遺産の中に複数の不動産がある場合,各相続人が1つずつ不動産を取得する,というようなものです。

 

 

この「現物分割」はシンプルなのが長所です。

相続人が3人いて土地が3つあるとします。

「俺はこの土地が欲しい。」「じゃあ,俺はこれが欲しい。」「僕はこれでいいよ。」と合意ができれば,すぐに解決します。

 

 

しかし,不動産が1つしかない場合などは難しいです。

不動産が1つである場合に現物分割しようとすれば,その土地を分筆することになります。

ただし,土地を分筆する場合,測量をする必要がありますし,費用もかかります。

 

 

次に,「代償分割」とは,ある遺産を取得する代わりに,他の相続人に金銭を支払って解決するという方法です。その際に支払う金銭のことを「代償金」といいます。

 

 

たとえば,主な遺産が実家の土地と建物だけという場合,一人の相続人がその土地と建物を相続して,他の相続人に対して金銭(代償金)を支払うという形になります。

 

 

この「代償分割」のメリットは,相続人間で合意ができた場合には,比較的簡単に処理が可能です。

なぜなら,不動産の名義を移転することと,お金を払うことだけで済むからです。

 

 

しかし,デメリットとして,2点挙げることができます。

 

 

1つは,代償金の額について争いが起こりやすいということです。

つまり,不動産の評価を幾らとするかについて合意できない場合があります。

 

 

デメリットの二つ目は,代償金を用意できない場合がある,ということです。

 

不動産の価格が大きい場合などには,代償金を準備できなくて「代償分割」が実現しないことがあります。

 

 

分割方法の3つめですが,「換価分割」というのがあります。

「換価分割」とは,遺産を売却して換価した売却代金を,相続人の間で分配する方法です。

 

 

「現物分割」が困難で,かつ,どの相続人も遺産の取得を希望せず,したがって,「代償分割」もできないような場合には,遺産を売却さえできれば解決するという点がメリットです。

 

 

また,この方法だと,実際に売れた価格が適正な市場価格ということになりますので,金額に関する争いも起きにくいといえます。

 

 

しかし,問題点としては,購入希望者が現れないと売却できない点,また,購入希望者が現れた場合でも,売却額について相続人の間で合意できないと売却が実現しない点などがあります。

 

 

最後に,「共有分割」というのは,遺産をそのまま共有とする,という方法です。たとえば,遺産の不動産の名義を「長男2分の1,二男2分の1」などと共有として登記するという形です。

 

 

これまでに述べた,「現物分割」「代償分割」「換価分割」のいずれも実現しない場合のやむを得ない手段です。

 

 

「共有分割」も遺産分割の一種ではあるのですが,最終的解決とはいえません。

いずれ,共有状態を解消するか売却することが必要になるでしょう。

したがって,あくまで暫定的な解決にすぎません。

 

 

このように「遺産分割」といっても複数の方法があり,それぞれメリット,デメリットがあります。

 

 

実際の遺産分割では,遺産の種類や内容,相続人の希望など,複雑な要素が絡み合いますので,何がベストかは,それぞれの事案によって異なります。

 

 

 

5月29日はHPVワクチン薬害大阪訴訟の第7回口頭弁論です

 

日時:平成30年5月29日(火)14時~16時

場所:大阪地方裁判所本館2階大法廷(202号法廷)

サポーター・傍聴希望者集合

時刻:1245

場所:大阪地裁本館南側玄関前 

  • 傍聴案内ダウンロードはこちら
  • 傍聴希望者は12:45までに裁判所本館南側玄関に集合して下さい。
  • 法廷では、弁護団がプレゼンテーションを行い、HPVワクチンが安全だという被告の主張が誤りであること等を明らかにします
  • 傍聴券の抽選に外れた方のために、弁護団が裁判の様子を分かりやすく説明します。
  • 裁判終了後には、弁護団による報告集会を予定しています。

【当日のスケジュールサポーター・傍聴希望者の方

1245分    大阪地裁本館南側玄関前集合

1250分頃  原告団・弁護団入廷

1305  傍聴整理券交付・傍聴券抽選

 ※抽選に外れた方は大阪弁護士会館1203号室へ

   弁護団が裁判の様子を 分かりやすく説明します。

1400  第6回期日開廷(16時頃終了予定)

1400  弁護団による裁判の様子の説明(大阪弁護士会館1203号室)

1600  閉廷(予定)

1630分頃 報告集会(大阪弁護士会館1203号室)

 【地図】

大阪地方裁判所

大阪市北区西天満2-1-10

地下鉄・京阪本線淀屋橋駅下車1番出口から徒歩約10

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大阪訴訟第7回期日案内
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定年後の継続雇用

平成30年3月1日付で,定年後の継続雇用に関する最高裁の決定が出ました。

女性の従業員が60歳で定年を迎えるにあたって,定年後の継続雇用契約に関して,会社からそれまでの賃金の約75%カットの案を提示されたという事案です。

 

 

一審の福岡地裁小倉支部判決は,「前に比べて仕事が減るので不合理ではない」との会社の主張を支持しました。

 

 

これに対し,二審の福岡高裁判決は,「高年齢者雇用安定法の趣旨に反する」といって,会社に対して慰謝料100万円の支払いを命じる逆転判決となりました。

 

 

「高年齢者雇用安定法」とはどのような法律なのでしょうか。

同法は第8条で定年制について規定しています。その規程によると,「企業が定年制を採用するのであれば定年は60歳以上にしなさい」と決められています。

 

 

そもそも,なぜ定年という制度があるのでしょうか。

 

 

労働関係法令により,いわゆる「正社員」の地位は厚く保護されており,一度採用すると簡単には解雇できないようになっています。

 

 

つまり,定年制がないと,従業員が自分から「辞めます」と言わない限り,いつまで経っても会社は従業員を辞めさせられないということになってしまいます。

 

 

企業としては,80歳や90歳まで働かれては困るのが本音です。

しかも,年を取ったからといって簡単に給料を減額することもできません(労働契約法9条等参照)。

 

 

だから企業は定年制を採用するのです。

現在は,ほとんどの企業が60歳定年制を採用しています。

 

 

ところで,以前は,年金が60歳からもらえたので60歳定年制でもよかったのですが,年金の支給開始が原則65歳からになりました

 

 

そのため,60歳から65歳までの人の生活保障を図るため,高年齢者雇用安定法が改正され,企業は,①定年制を廃止する,②定年を65歳以上にする,③希望者全員を継続雇用する制度を導入する,のうちのいずれかを採用することが義務づけられました。

 

 

このうち,ほとんどの企業が③の「継続雇用制度」を導入しています。

「継続雇用制度」では,仕事が減少するなら給料を下げてもよいとされています。しかし,法律上,どの程度の減少まで許されるかについては規定がありません。

 

 

そのため,同制度で給料を減らされたということで,多くの裁判が起きています。

今回の裁判もそのうちの1つです。

 

 

今回の裁判では賃金を約75%もカットするということで,「60歳から65歳までの人の生活保障を図る」という「高年齢者雇用安定法」の趣旨に反すると判断されたわけです。

 

 

今回,最高裁の判断が出ましたが,最高裁も「何%のカットまでならオーケー」とは言っていませんので,今後も同様の裁判が続くと思われます。

 

もっとも,今回の判決の確定で,定年後の賃金を大幅にカットしている企業は見直しを迫られるでしょう。

海外の被害者との国際シンポジウムに参加しました

 

 2018年3月24日、東京大学浅野キャンパス内において、薬害オンブズパースン会議(Medwatcher Japan)の主催による国際シンポジウム「世界のHPVワクチン被害は今」が開催されました。 

会場は満席となり、多くのメディア関係者も来場するなど、海外の被害の実情に関する社会の関心の高さが強く感じられました。

 当日は、薬害オンブズパースン会議事務局長でもある水口真寿美HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団共同代表が、日本における被害と訴訟の状況について報告を行いました。

 続いて、海外から来日した4人のシンポジストが、各国での被害の重大さや診療態勢の欠如に加えて、国や製薬企業から不当に圧力をかけられている状況を報告しました。

 コロンビアの被害者団体(Rebuilding Hope Association HPV Vaccine Victims)の代表を務めるモニカ・レオン・デル・リオ(Monica Leon Del Rio)さん。

 スペインの被害者団体AAVP(Association of Affected People due to the HPV vaccines in Spain)の代表を務めるアリシア・カピーラ(Alicia Capilla)さん。

 イギリスの被害者団体AHVID(UK Association of HPV Vaccine Injured Daughters)の科学部門を担当するマンディープ・バディアル(Mandeep Badial)さん。

 アイルランドの被害者団体REGRET(Reactions and Effects of Gardasil Resulting in Extreme Trauma)の広報を担当するアンナ・キャノンさん。

 来日した4人のみなさんは、いずれも被害者の母親として、それぞれの国において、被害者運動の中心的な役割を果たしてきた方々です。また、弁護士でもあるコロンビアのモニカさんは、コロンビア国内でHPVワクチン薬害についてのクラスアクションを提起しています。

 いずれの報告者からも、このワクチンを接種した後に生じる副反応は、時間の経過を追って様々な症状が重層化していくという特徴を持っており、それぞれの国内で患者を多く診察する専門医らが、自己免疫性の疾患として病態を捉えながらその解明を進めようとしていること、そして、HPVワクチンを推進する立場の人々から「反ワクチン団体」であるかのようなレッテル貼りをされ、不当な非難や中傷にさらされていることが、共通して説明されました。

 各国からの報告を通じて、HPVワクチン被害は日本だけで起きている問題ではないこと、そして各国の被害者が、日本と同様に、医療から放置されているだけではなく、激しい攻撃に耐えながら戦い続けていることを、あらためて良く理解することができました。

 後半のパネルディスカッションでは、HPVワクチン薬害全国原告団の代表を務める酒井七海さんが、被害者本人として、このワクチンを接種してから現在までの間、さまざまな症状に苦しめられてきたことを報告しました。

 この日のパネルディスカッションを通じて、同じ症状に苦しむ被害者が国境を越えて交流し、ともに支え合ってこの問題に取り組んで行く必要があることを、このシンポジウムに参加した5カ国の関係者の共通認識とすることができました。

 満開を迎えつつある桜並木に見守られて開催された今回のシンポジウムによって、HPVワクチンの被害者は、国際的な連帯を拡大していくための新たな一歩を踏み出すことができました。

 弁護団としても、こうした連帯をさらに深めるための努力を継続していきたいと思います。

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遺産の評価

相続について,遺言書がない場合で相続人が複数いる場合,遺産分けについて相続人の間で協議をすることになります。

 

 

例えば,子ども2人が相続人の場合,2人で話し合って,分け方について話し合いをします。話し合いの結果,合意ができれば何の問題もありません。合意に基づいて遺産を分けることになります。

 

 

話し合いがまとまらない場合は問題です。

 

 

「遺産の分け方は法律で決まっているのだから何も難しくないのではないか。」とおっしゃる方がときどきおられます。

 

 

確かに,民法という法律で遺産の分け方の「割合」は決まっています。

 

 

たとえば,親が亡くなり,法定相続人が子ども2人だけの場合,相続割合は2分の1ずつです。

このように,「割合」は決まっているのですが,「割合」だけ決まっていても紛争は生じます。

 

 

一例として,親が残した遺産が,実家の土地と建物といくらかの預金だとします。

そして,相続人は長男と次男の2人のみだとします。

 

 

このような場合,実家を売却するという選択肢もありますが,長男が実家に住みたいという場合もあります。特に長男が親と同居していたような場合は,そのまま実家に住み続けたいということが多いでしょう。

 

 

そうすると,長男は「実家が欲しい。」,二男は「別に実家は要らないけどお金で欲しい。」ということになります。

 

 

この場合に実家の価値(評価)が問題となります。

 

 

なぜなら,仮に,親が残した預金が1000万円あるとして,実家の価値が1000万円であれば,長男が実家をもらって,二男が預金をもらえば公平な結果となります。

 

 

しかし,実家の価値が1500万円であれば,長男が500万円分多くもらうことになってしまいます。そうなると,二男は親の預金1000万円をもらうだけでは不満で,長男に対して「プラス250万円払って欲しい。」と思うでしょう。

 

 

つまり,実家の価値(評価)が重要になってくるのです。

 

 

このような場合,2人で話し合いがつけば問題はありません。

例えば,2人の間で,「実家の相場は1200万円くらいなので,遺産の総額は2200万円として,二男は預金1000万円を取得し,長男から二男へ100万円渡す。」というような合意が成立すれば,それで解決です。

 

 

しかし,合意ができない場合もあります。なぜかというと,長男としては実家の価値が低い方が得になるし,二男としては実家の価値が高い方が得になるからです。

 

 

このような問題があるため,法律で相続の「割合」が決まっていても遺産の評価でもめることがあるのです。

 

 

このように遺産の評価でもめた場合は,遺産分割調停や遺産分割審判などの裁判所の手続を利用することになります。

 

 

裁判所では,まずは,当事者間で評価額について合意できないかを試みます。

合意ができれば合意に基づいて話を進めます。

 

 

合意ができない場合は,「鑑定」といって,不動産鑑定士に鑑定をしてもらって,不動産の評価額を決定します。鑑定には費用も必要になりますが(30万~50万円程度),「どうしても公平な判断をして欲しい」ということであれば仕方がありません。

鑑定の結果が出れば,その結果に基づいて話を進めていくことになります。

 

 

今回は「実家」という不動産の評価を例に挙げましたが,不動産以外でも株式(特に非上場株式)とか骨董品とか様々なものについて「評価」が問題になり紛争になる場合があります。

 

 

 

まとめサイト

平成29年11月16日,大阪地裁で,インターネットの「まとめサイト」の管理者に対して200万円の損害賠償を命じる判決が出されました。

 

 

今回の判決では,「名誉毀損や人種差別に当たる記事を多数掲載して執拗である」,「限度を超えた侮辱である」などと述べられています。

 

 

裁判では,サイトの管理者は,「情報を集約しただけ」と主張していました。

実際,サイトの管理者は「2ちゃんねる」などに書き込まれた記事を読みやすく編集していたとのことです。

 

 

報道を見ていますと,相当ひどい中傷や侮辱表現が記載されていたようですし,実際に元の記事を掲載した人に対しても損害賠償責任が認められています。

 

 

今回の裁判のポイントは、どれだけひどい内容の記事であっても,「他の人が書き込んだ記事を編集しただけです。」ということで責任を免れることができるのか,という点でしょう。

 

 

判決は,他のサイトの引用であっても,文字を拡大したりして元の記事より分かりやすく効果的に表現していることに着目して,元の記事とは別に人格権を侵害したと述べています。

 

 

報道だけでは明らかではありませんが,個人的な感想としては,「2ちゃんねる」の記事が閲覧される数に比べて,「まとめサイト」の閲覧数のほうが飛躍的に多いことも考慮したのではないかと思います。

 

 

別の話に例えると,たとえば,ある人が「これはあくまで噂なんだけれど」と前置きをして,誰かの悪口を話したとします。

 

 

それが,ごく内輪での話であれば許されるでしょう。

 

 

しかし,多くの人に言いふらしたとしたらどうでしょう。

元々,「誰か」が言ったことだとしても,仲のいい友人だけに話すのと多くの人に言いふらすのとでは影響が違いますよね。

 

 

このように,名誉毀損や侮辱表現というのは,どの程度の影響を与えるかというのが重要なのです。

 

 

この点は表現の自由という重要な問題に関係してきます。

ほんの少しでも他人の悪口をいえば損害賠償を請求されたり犯罪になったりすれば,表現の自由はなくなってしまい,民主主義の危機に陥ります。

 

 

かといって,どれだけひどいことを言っても自由だということにはなりません。

 

 

その意味で,今回の判決は非常に重要な判決です。

表現の自由と個人の名誉の保護のどちらを優先するかという問題には簡単に答えが出ません。

 

 

今後も同様の裁判や法律の変更などについて,国民一人ひとりがしっかりと見ていく必要があると思います。

 

 

 

アディーレ業務停止

今年の10月,東京弁護士会が弁護士法人「アディーレ法律事務所」を業務停止2か月の懲戒処分としたことがニュースになりました。

 

 

アディーレ法律事務所は,着手金返還キャンペーンを「1か月の期間限定」と謳いながら5年近く続けていました。

よくある「今だけ無料」という感じの広告ですね。これを長期間続けたわけです。

 

 

この件に関して,昨年2月に消費者庁が「景品表示法」に違反するとして,「広告を禁止しなさい」という「措置命令」を出していました。

 

 

景品表示法については,以前お伝えしましたが,そのときは「優良誤認表示」でした。

今回は,景品表示法5条2号の「有利誤認表示」です。

 

 

「有利誤認表示」とは,実際の取引よりも著しく有利であると誤認される表示です。

 

 

どうして「今だけ無料」などの表示を続けると違法なのでしょうか。

 

 

例えば,衣料品の販売などでバーゲンセールというのがありますね。バーゲンにはどうして行きたくなるのでしょう?

「お得感」があるからですよね。

 

 

バーゲンで「1万円」の札に赤線を引いて「セール期間中につき50%OFF」と書いてあれば,とても「お得感」がありますよね。

なぜなら,「1万円相当の商品を5000円で手に入れることができる」と思うからですよね。

 

 

もし,同じ商品がバーゲンになる前から5000円で売っていたとしたらどうでしょう?

そうであれば,そもそも,その商品は初めから「5000円」の商品だということです(5000円でも利益が出るということ)。

消費者は「元々5000円」の商品を喜んで得した気分になって5000円払って買うことになるわけです。

 

 

なんだか消費者を欺いているような気がしませんか?

このような行為は場合によっては刑法の詐欺罪に問われる可能性もある行為です。

 

 

景品表示法はこのような行為を「有利誤認表示」として禁止することによって,消費者を保護しているのです。

 

 

今回の法律事務所の行為は,「1か月間限定」として着手金返還キャンペーンを行い,キャンペーンを5年間近く延長していたとのことです。

 

 

ところで,「弁護士に依頼する」というと,どういうイメージがあるでしょうか?

弁護士費用って,なんとなく高額なイメージがあるのではないでしょうか。

弁護士が「期間限定で着手金が実質無料」というと,「本来高額な着手金が今なら特別に無料」という「お得な」印象を与えることになります。

 

 

しかし,5年間も実質無料でできたということは,そもそも着手金が実質無料でもきちんと利益が出るようになっていたと思われます。

そう考えると,先ほどのバーゲンの例と同じように,特別な「お得感」を出して消費者を誤解させたといえるのではないでしょうか。

 

 

 

大阪訴訟第5回期日が開かれました

 

 

   

2017年11月7日、澄み渡る空の下、第5回目となる大阪訴訟の口頭弁論期日を迎えました。

当日は朝から、期日告知の街頭活動を行い、多くの方にチラシを受け取っていただきました。

当日朝の街頭活動の様子
当日朝の街頭活動の様子

本日の期日では、原告の児玉望美さんの意見陳述と弁護団からのプレゼンテーションを行いました。

満席となった傍聴席からの暖かい視線に守られながら、裁判官の前に立った児玉望美さんは、学校で勧められて疑問を抱くことなくHPVワクチンを接種したこと、接種後2ヶ月間腕の腫れが引かなかったことなどに加えて、その後、次々と襲いかかる頭痛、じんましん、腹痛、関節痛などに悩まされたこと、意識を失うこともしばしばあったこと、そのために接種前には経験のなかった7度にわたる入院を経験してきたことなど、HPVワクチンの副反応の苦しみを自分の言葉で語りました。

期日後の記者会見に臨む児玉望美さん(右から2人目)
期日後の記者会見に臨む児玉望美さん(右から2人目)

そして、児玉さんは、学校では「ずる休み」と言われてとてもつらかったことなど、HPVの副反応にさいなまれる毎日が不安の連続であって、将来のことも考えられないという心境で生活をせざるを得ないことを、静かに、丁寧に、裁判官に対して説明しました。

児玉さんは、最後に、次のように力強く訴えました。

「被害者は架空の存在ではなく、現実にいまを生きている、必死に副作用と闘っているのだということを、ぜひとも分かってほしいのです。私はHPVワクチンをうってから私の体に起こっていることを知ってほしいと思い、また、包み隠さず伝えるべきだと考えました。ですから私は実名を明かして、この訴訟に参加しています。」

「私たち被害者の思いは一つです。現実に生きている私たちの声を、被害を、正面から受け止めて下さい。」

望美さんの真剣な言葉の1つ1つに対して、裁判官もしっかりと耳を傾けていました。

弁護団からの説明では、日本で製造販売承認された時点において、既にHPVワクチンの危険性が知られていたことを説明しました。

具体的には、まず、古くからワクチンというもの自体が基本的に自己免疫に異常を生じさせる危険があることが知られていました。

また、本件ワクチンには新規のアジュバント(免疫増強剤)が使用されているだけでなく、「L1タンパクVLP」という成分が含まれています。この「L1タンパクVLP」は、人が保有しているタンパク質と類似性があるために、「分子相同性」という作用によって、体内の抗体が正常な細胞まで攻撃してしまう危険性があります。
このことは既にHPVワクチンの承認時には判明していました。

このようなHPVワクチンの危険性が判明していたにもかかわらず、製薬会社は危険性を過小評価して、国に対して製造販売承認の申請を行い、国は承認を与えたのです。

記者会見で期日の報告を行う弁護団
記者会見で期日の報告を行う弁護団

さらに、製造販売承認の後、多数のHPVワクチンによる副反応が多数報告され、本件ワクチンの危険性は明白に認識できる状況となったにもかかわらず、国は「緊急促進事業」という「国策」により、積極的なHPVワクチンの接種勧奨を行ったのです。

その結果、多数の方がHPVワクチンを接種され、被害は拡大しました。

製薬企業も当然、HPVワクチンの危険性についての情報を十分把握していたにもかかわらず、上記のような多数の副反応報告を無視し続けました。
原告団および弁護団は、これからも製薬会社であるGSK・MSD、さらには被告国の責任を厳しく追及します。

次回大阪訴訟期日は平成30年2月20日午後2時開廷です。
今後とも引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

ネタバレサイトの摘発

先月,ワンピースなどのマンガの内容を無断配信していた,いわゆる「ネタバレサイト」の運営者らが逮捕されたとの報道がありました。

 

 

全国で初めてだとのことです。

 

 

報道によると,発売日より早く販売される「早売り店」から雑誌を入手してインターネットにアップしていたそうです。

 

 

逮捕容疑は,著作権法違反です。

 

 

著作権というのは,音楽や小説などの作品の作者が自分の著作物を独占的に利用できる権利です。

 

 

今回の件は,無断でインターネットに作品を上げたのですから,著作権法違反は明らかでしょう。

 

 

著作権法違反は犯罪であり,今回の件では,著作権の侵害と出版権の侵害に該当するので,10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が科せられます。

 

 

報道によると,容疑者はアフィリエイト広告で3億円近くの収入を得ていたとされます。

 

 

では,作家や出版社はこのお金を取り返すことができるのでしょうか。

 

 

著作権法違反の場合,刑事罰もありますし,民事上の損害賠償義務も発生します。

問題は,損害額が幾らかということです。

 

 

法律の世界の基本として,「損害を被った」と言って訴える人が幾らの損害を被ったかを証明する必要があります。

 

 

著作権法違反の場合,損害額を証明することは容易ではありません。

たとえば,何人の人がネタバレサイトを見たのか,サイトを見た人は本を買わなかったのか,サイトを見た人はサイトも見たけど本も買っているかもしれない,など,「サイトによる損害額」を証明することは極めて困難です。

 

 

このように著作権法違反の場合,損害額を証明することが極めて困難なので,著作権法は損害額を証明しやすいような工夫をしています。

 

 

まず,DVDの海賊版などを作成して販売した場合,販売した数に著作権者の一つ当たりの利益をかけた金額を損害額と推定するという規定があります(著作権法114条1項)。

 

 

たとえば,DVDの海賊版を無断で作成して1万本販売したとします。

そのDVDの1本当たりの正規の利益が1000円だとすると,1万本×1000円=1000万円となり,1000万円が損害額だと推定されるのです。

海賊版がなければ正規のDVDが1万本売れるはずだったのに売れなかったと考えるわけです。

 

 

また,著作権を侵害した人が儲けた利益を損害額と推定することもできます(同条2項)。

こちらは,悪いことをして儲けた分をはき出させようという考え方であると思われます。

 

 

もう一つありますが,省略します(同条3項)。

 

 

それでは,今回の件で,著作権法によって損害額を推定できるでしょうか。

 

 

今回の件はかなり微妙だと思います。

なぜなら,アフィリエイトによる広告収入だからです。

先ほどの海賊版の話は分かりやすいですが,今回の件は,マンガを丸々掲載して海賊版を販売して収入を得たわけではありません。

 

 

著作権法は,このようなケースを予定していないのではないかという疑問があります。

法律が当初予定していたことと違うことが起きた場合に,どこまでその法律を適用することができるかという非常に難しい問題です。

 

 

 

 

「富山県出身者は採用しない」発言

今年の7月,富山市に本社を置く総合機械メーカーの会長が「富山生まれの人は閉鎖的な考え方が強いから採らない」と発言したことが物議を醸しました。

 

 

この発言に対しては,「出身地による差別だ」「富山県民を侮辱している」などの批判が相次ぎました。

 

 

このような発言をすること,あるいは,実際に採用に当たって富山県民を採用しないという基準を作ったりすることは法律的にどう評価されるのでしょうか。

 

 

実は,法律的には,企業は,どのような人を雇うかについて原則として自由に選択することができます。

 

 

最高裁は,有名な「三菱樹脂事件」(昭和48年12月12日判決)において,企業が誰を採用するかについては,「法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由に決定することができる」と述べています。

 

 

もっとも,この最高裁が述べるように,「法律による特別の制限」があれば,例外的に企業の採用の自由も制限を受けることになります。

 

 

たとえば,性別を理由とする採用差別は「男女雇用機会均等法」で禁止されています(男女雇用機会均等法5条)。

 

 

また,採用時に年齢制限をつけることは,「雇用対策法」によって原則として禁止されています(雇用対策法10条)。

 

 

しかし,出身地や本籍地などを採用基準にすることはどの法律でも禁止されていません。

 

 

この点,厚生労働省は,民間企業が従業員を採用する場合の指針として,「公正な採用選考の基本」という指針を出しており,この指針の中では,出生地や本籍地を採用の基準にするようなことはやめるようにと書かれています。

 

 

しかし,あくまで「指針」であり「助言」のようなものに過ぎず,法的拘束力はありません。

 

 

どうしてこのような結論になるかというと,「法の下の平等」などの憲法規範は直接的には,国家と国民との関係を規律するものだからです。

民間対民間の関係には,直接,憲法の規定は適用されないのです。

この話は難しくなるので,またの機会に書いてみたいと思います。

 

 

 

 

パズドラに措置命令

先日,「パズドラ」の不当な宣伝に対して,消費者庁がゲーム会社「ガンホー」に対して再発防止を求める措置命令を出しました。

 

 

「パズドラ」はゲームを楽しむこと自体は無料なのですが,課金制度で強いキャラクターを入手できるという仕組みになっています。

 

 

報道によると,ガンホーが配信したインターネット番組で,ゲーム製作者が「新しいキャラクター13体が全部『究極進化』する,」と宣伝したのに,実際に「究極進化」したのは2体だけだったとのことで,課金した消費者から苦情が多数あったとのことです。

 

 

消費者庁は,調査の結果,景品表示法の「優良誤認」にあたるとして,再発防止を命じました。

 

 

景品表示法は,不当な表示によって消費者に誤解を与えることを禁止して,不当な広告などから消費者を保護することを目的としています。

 

 

そのなかで,今回は「優良誤認表示」にあたるとされました(5条第1号)。

 

 

「優良誤認表示」とは,宣伝などで,実際のものより著しく優良であると示す表示のことをいいます。

 

 

今回は,実際は2体のキャラクターしか「究極進化」しないのに,13体全てが「究極進化」するかのように宣伝したというのですから,「優良誤認表示」に該当するとされたのは当然といえるでしょう。

 

 

 

 

タトゥー裁判

医師免許を持たずにタトゥーを入れたということで,医師法違反の罪に問われた彫り師の刑事裁判が現在,進行中です。

 

 

今年4月に第1回公判が開かれて,彫り師の人は無罪を主張しました。

 

 

争点は,タトゥー(入れ墨)が「医業」に該当するか否かです。

医師法第17条には,「医師でなければ,医業をなしてはならない。」と規定されています。

 

 

検察側は,感染症の危険性などを理由に,「医師が行わなければ保健衛生上の危害が生じる」と主張しています。

 

 

弁護側は,「医業とは健康を確保することであり,タトゥーを彫ることは医業ではない」,「医師免許がなければ彫り師になれないというのでは,憲法が保障している職業選択の自由の侵害に当たる」等と主張しています。

 

 

さて,法律にはどう書いてあるのでしょうか。

 

 

実は,医師法には,「医業」とは何かについて明確に規定していません。

そのため,「医業とは何か」がこれまでにも何回か問題になりました。

 

 

たとえば,かつて,「看護師が注射をしてもよいか」とか,「ホームヘルパーが痰の吸引をしてもよいか」などが議論されました。

これらも注射や痰の吸引が「医業」かどうかという問題です。

 

 

このような問題が生じた場合,たいてい,「通達」というものが出されて,一応の決着を見ます。

 

 

タトゥーに関して参考になる通達は,「アートメイク」に関して,平成13年に厚生労働省が出した通達です。

 

 

この通達によると,「アートメイクは医師以外が行ってはいけない。」という見解が示されています。

そして,厚労省は,「この通知はタトゥーも含む」との見解を取っています。

つまり「タトゥーも医師以外は行ってはいけない。」というのが,一応,国の見解ということになります。

 

 

こういうと,「国の見解」が「ダメ」だというのなら「ダメ」なのではないか?という素朴な疑問が生じるかも知れません。

 

 

ここで,「通達」とは何か,「国の見解」とは何か,について少し勉強しましょう。

 

 

ちょっと難しい話ですが,「通達」は,行政機関が出すもので,行政機関内部における指針です。

したがって,国民の権利・義務を直接に規定するものではありません。

 

 

三権分立というのを学校で学びましたね。

 

 

「法律」を作るのは国民の選挙によって選ばれた国会議員が集まった国会です。

法律は民主的に選ばれた国会議員が作るので,国民の権利を直接制限します。

つまり,国民は法律に拘束されます。

 

 

しかし,「通達」は,行政機関が出すものなので,国民はそれに拘束されません。

このように,実は,本来,国民が拘束を受けないはずの「通達」によって,「国の見解」というものができているのです。

 

 

ですから,今回の件も,一応,検察は平成13年の通達を根拠に起訴しているのですが,「タトゥーは医師以外が行ってはいけない。」という「通達」に基づく「国の見解」は,直接,国民を拘束する効力を持っていないのです。

 

 

したがって,この裁判の結果がどうなるかは何ともいえません。

 

 

裁判所は,「通達」に縛られることなく,裁判所自身の考えで判断します。

裁判の結果がどうなるかは非常に興味深いです。

 

 

 

 

大阪訴訟第3回口頭弁論が開かれました

 

2017年5月23日、汗ばむような陽気の中、大阪地方裁判所において、大阪訴訟第3回口頭弁論期日が開催されました。今回も多くの支援者が来てくださり、傍聴希望者多数のため、傍聴券は抽選となりました。

大阪弁護士会館内の事前打ち合わせの様子
大阪弁護士会館内の事前打ち合わせの様子

法廷では、原告19番ご本人の意見陳述が行われました。
原告19番さんは、言葉では到底表現することのできないほどの激しい痛みがあるのに原因が変わらずただ痛みに耐えていたこと、やっと原因がわかると思い受診した厚生労働省指定の協力医療機関で、医師から詐病のように扱われ傷ついたこと、治療を受けるために三重まで行かなければならないこと等、辛い状況にあることを述べました。

そのような状況においても、彼女は、母親を思いやり、母親に心配をかけまいと、母親の前では泣かないようにしているそうです。また、将来は医療系の仕事をして患者さんの辛さを理解し、痛みを少しでもやわらげてあげたいと言っていました。彼女の優しさ、強さに心を打たれました。

大阪地方裁判所
大阪地方裁判所

続いて、パワーポイントを用いて準備書面の説明が行われました。

今回、2つの準備書面が提出されています。

1つは、HPVワクチン接種との因果関係に関するものです。少女たちの病態が、いくつもの多様な症状(多様性)が、時間の経過とともに次々と現れ、重なっている(重層性)という共通点があり、これを全体的に捉えると極めて特異的な新しい疾患であると言えること、少女たちの病態を裏付ける知見が次々と報告されていること、したがって、HPVワクチン接種と少女たちの病態との間に訴訟上の因果関係が認められることが説明されました。

もう1つは、ワクチンの製造販売承認の判断基準や接種の積極的勧奨が許されるための要件についてです。原告らはワクチンの承認の判断基準において、ワクチンには治療薬よりも高い有効性・安全性が求められることを主張しています。また、公権力による積極的勧奨が許されるには、公衆衛生・集団予防の必要性があり、集団予防の効果が検証されていること、製造販売承認時よりも高い有効性・安全性が必要であることを主張しています。そして、これらの主張が原告ら独自の見解ではなく、公式的な文書や論文に根拠があることを示しました。さらに、本件ワクチンの承認審査において異例の取扱がなされており、このような異例の取扱をしたことについて、国に対して、きちんとした説明を行うよう求めました。

法廷での期日と並行して、傍聴に外れてしまった方のために、法廷外企画が行われました。この企画では、法廷で陳述されている原告及び被告らの準備書面の内容を分かりやすく、時には皮肉も交えて説明しています。傍聴に外れてしまった方にも、有意義だったと言っていただけるよう工夫して企画しております。
その後、法廷外企画の会場には、法廷に出席していた原告や傍聴していた支援者も合流し、第3回期日の報告集会が行われました。
報告集会後には、原告のみなさんと支援者のみなさんが気軽に話せるよう、茶話会も開かれました。

報告集会の様子
報告集会の様子

第4回の期日は、2017年8月8日午後2時から行われます。
今回に引き続き、さらに多くの方に参加いただければと思います。

メルカリで現金出品

最近,メルカリで現金を出品していることが話題になりました。

 

 

以前から古いコインなど希少性のある物は取引に出されていたのですが,最近話題になったのは現行紙幣です。

たとえば「1万円札4枚を4万7000円」などで出品していたのです。

 

 

普通に考えれば,そんなものを買うと損をするような気がしますが,実は買う人がいます。

 

 

その理由は,いわゆる多重債務者が,クレジットカードのキャッシング枠を使い切ってしまい,それでも返済のために現金が必要なので,枠が空いているショッピング枠を利用して現金を入手していると考えられます。

 

 

この点,法律上問題はないのでしょうか。

 

 

この取引の実体を見ると,まず,4万円を出品した人はクレジット会社から4万7000円を受け取ることになります。

 

 

次に,購入した人は,約1か月後に4万7000円が口座から引き落とされます。

 

 

購入した人から見ると,4万円を一時的に手に入れて約1か月後に4万7000円を支払う訳ですから,4万円を借りて7000円の利息を付けて返しているようなものです。

 

 

このような実体を「金銭の貸し付け」とみなすことができれば,出品者の行為は「貸金業」にあたる可能性があります。

 

 

貸金業にあたるのであれば,貸金業登録が必要で(貸金業法3条),無登録営業は犯罪になります。

 

 

また,貸金業に該当する場合,金利は最大で年率20%までしか許されません(出資法5条2項)。

先ほどの例でいえば,年率に換算すると200%を超えますので,確実に違法です。刑事罰もあります。

 

 

このような問題の指摘を受けて,メルカリは現金の出品を禁止して,出品を発見した場合には削除しているようです。

 

 

しかし,メルカリについて調べていると,現金出品以外にも問題があるようです。

 

 

メルカリの制度では,売買が成立した場合に,買主から支払われた代金をいったんメルカリが確保してから売主に渡すというシステムです。

 

 

このシステムが出資法で禁止されている「預り金」にあたるのではないかという指摘もされているようです。

「預り金」は銀行法などの特別の規定で許されている場合を除き違法です。

 

 

このように,新しい商売の仕組みを考えるベンチャー企業には,常に法律的にグレーな問題がついて回ります。

 

 

 

フランク三浦勝訴

先月,フランク三浦とフランク・ミュラーとの裁判で最高裁がフランク三浦勝訴の判決を出しました。

 

 

日本の会社がスイスの高級時計「フランク・ミュラー」のパロディー商品「フランク三浦」を販売している件について,「フランク・ミュラー」側が「フランク三浦」の商標登録は,「フランク・ミュラー」に類似しているので無効だと特許庁に訴えました。

 

 

すると,特許庁は「『フランク三浦』の商標登録は無効」だと判断しました。

 

 

この特許庁の判断に対して,フランク三浦側が裁判所に「無効はおかしい」と訴えました。

 

 

この裁判は知的財産の裁判なので,一審が高等裁判所です。これを「知財高裁」と言います。

 

 

知財高裁は,「呼称(呼び方)は似ているが,外観で明確に区別できる。」,「『フランク三浦』は4000円〜6000円程度であり,100万円を超える『フランク・ミュラー』と間違うはずがない」などと述べて,商標登録は有効だと判断しました。

 

 

商標登録は商標法の問題です。

商標法の考え方は,取引をしようとする人が,「その商品のメーカーを間違うおそれがあるか否か」という基準で判断されます。

 

 

知財高裁は,「フランク三浦」の時計には漢字で「三浦」と書いてあることや取引価格が違いすぎることなどから「購入しようとする人が間違えるはずがない」と判断したのです。

 

 

裁判で,フランク・ミュラー側は,「ブランドイメージにただ乗りし,イメージを毀損する」と主張していました。

 

 

たしかに,ブランドイメージは低下するかもしれません。

 

 

しかし,最高裁は,「知財高裁の判断が正しい」として,フランク・ミュラー側の上告を退けました。

 

 

感想としては,「商標権」の問題としては,今回の判決は妥当だと思います。

 

 

商標権の判断基準は,「メーカーを間違う可能性があるか否か」ですので,漢字で「三浦」と書いてあり,価格も100倍以上も違うとなれば,誰も同じメーカーとは思わないでしょう。

 

 

フランク・ミュラーが主張していた,「ブランドイメージにただ乗りし,イメージを毀損する」という点は,商標法ではなく,不正競争防止法の問題でしょう。

 

 

不正競争防止法というのは,まさに「ブランドイメージにただ乗り」して儲けることを禁止する法律です。

 

 

過去に「スナック・シャネル事件」というのがありました。

「スナック・シャネル」という名前でスナックを経営していた人が本家のシャネルから訴えられました。

 

 

スナックのほうは,高級ブランドの「シャネル」と場末のスナックが同じ経営者だと誰も思うはずがない,と主張しましたが,スナックが負けました(最高裁平成10年9月10日判決)。

 

 

なぜ,スナックが負けたかというと,不正競争防止法は商標法と違って,「経営者が同じだと勘違いするかどうか」は関係なく,ブランドイメージにただ乗りして儲けることを禁止しているからです。

 

 

「スナック・シャネル」という名前が本家の「シャネル」のイメージを利用していることは,誰の目にも明らかでしょう。

 

 

この「スナック・シャネル事件」を参考にすると,「フランク三浦」も,もしかしたら,不正競争防止法では負けるかもしれません。

 

 

もっとも,不正競争防止法では,ブランドが「著名」であることが必要です。

「全国的に誰でも知っている」程度でないと「著名」とはいえません。

 

 

現時点では,フランク・ミュラーは不正競争防止法では訴えていないようですけれど,仮に訴えた場合,裁判所がどのような判断を下すか興味深いところです。

 

 

 

 

バイト欠勤で罰金

最近,立て続けにコンビニで「欠勤による罰金」が話題になりました。

 

 

一つは東京で,今年1月にニュースになりました。

もう一つは名古屋で,今年2月にニュースになりました。

 

 

東京の事案は,女子高校生のアルバイト店員が風邪で2日間(計10時間)欠勤したということで,1か月で25時間勤務したのに,「ペナルティ」として10時間分の給料を差し引いていました。

 

 

名古屋の事案は,「急に欠勤したら1回1万円の罰金を徴収する」という内容の書類に署名させて,実際,1人のアルバイトに3回の遅刻を理由に計3万円を払わせた,という容疑で加盟店のオーナーらが書類送検されました。

 

 

いずれも,コンビニの加盟店が欠勤や遅刻を理由に従業員に対してペナルティを課したものですが,このようなことは法律的に許されるのでしょうか。

 

 

労働基準法の問題です。

 

 

遅刻や早退を繰り返すとか無断欠勤など,勤務態度に問題がある場合には,懲戒処分としての「減給」を定めることが許される場合があります。

 

 

ただし,懲戒処分としての「減給」は,就業規則で定める必要があります。

「こういう場合にはこういう懲戒を与えますよ」ということをきちんと就業規則で規定しておかなければなりません。

 

 

そして,懲戒処分として減給する場合,その額は,最大でも,1回の減給の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならず,かつ,減給総額は1回に支払われる給料の10分の1を超えてはならないと決められています(労働基準法第91条)。

 

 

したがって,東京の事案では,まず,就業規則で定めていないにもかかわらず(報道では明らかではありませんが,おそらく)減給した点で違法です。

 

 

そして,本来もらえるはずの給料が2万3000円程度(25時間分)であるところ,1万円近く(10時間分)「減給」されているので,減給の額についても違法です。

 

 

さて,名古屋の事案では,勝手に減給したのではなく,「急に欠勤したら1回1万円の罰金を徴収する」という内容の書類に署名させていたとのことです。

これならいいのでしょうか。

 

 

この点については,労働基準法は「賠償予定の禁止」を定めています(16条)。つまり,会社(使用者)は「こういうことをしたら違約金幾らですよ」という取り決めを従業員と交わしてはいけないということです。

 

 

この規定は,もともとは,戦前に,「仕事を辞めたら違約金を払う」という取り決めをしておいて,過酷な労働を無理強いさせられていたことがあったことから,労働者を守るために作られた規定です。

 

 

名古屋の事案では,この「賠償予定の禁止」に違反したために書類送検されました。

 

 

 

大阪訴訟第2回期日が開かれました。

2017年 2月 14日

本日、大阪地方裁判所において、大阪訴訟第2回口頭弁論期日が開催されました。
第1回期日に負けないくらいたくさんの支援者が来てくださりました。今回も傍聴希望者多数のため、傍聴券は抽選となりました。

 

今回の期日では原告本人の意見陳述と準備書面の説明が行われました。

原告の意見陳述は、前回同様に心を打つものであり、本件ワクチンにより人生そのものを奪われたことを、しっかりと具体的に自分の言葉で話されました。

準備書面の説明は前回に引き続きパワーポイントで行われました。
パワーポイントによる説明では、子宮頚がんを防ぐためには、ワクチンよりも検診こそが真の予防手段であって、検診をしていれば早期治療が可能で子宮頚がんにはならないこと、ワクチンを接種しても結局検診は欠かせないことについて説明しました。

(左)記者会見で発言する原告18番さん
(左)記者会見で発言する原告18番さん

閉廷後は、進行協議と記者会見が行われました。

また、前回に引き続き、原告・弁護士・支援者らによる報告集会が開催され、傍聴できなかった支援者の皆さんに、期日内容の報告や意見交換などが行われました。

報告集会で発言する水口真寿美弁護士(全国弁護団共同代表)
報告集会で発言する水口真寿美弁護士(全国弁護団共同代表)

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社会人サッカーでの骨折

昨年の12月,サッカーの試合中に骨折した男性が接触した相手に対して治療費や慰謝料を請求した訴訟の判決が東京地裁で言い渡されました。

 

 

事案は,男性が右太ももでボールをトラップしてから左脚でボールを蹴ろうとしたところに,相手選手が左足を上げてシューズの裏で男性の左脚のすね辺りを蹴りつけてしまい,男性が左脚のすねを骨折したというものです。

 

 

判決は怪我をさせた選手に治療費や慰謝料約250万円の支払を命じました。

この判決については,「サッカーで怪我は当然起きることだから判決は厳しすぎる。」という声も多いようです。

 

 

さて,スポーツでの怪我について法律はどのように位置づけているのでしょうか。

実はスポーツの怪我といっても特別の法律はありません。

民法という一般的な法律の「不法行為」が成立するか否かで判断することになります(民法709条)。

 

 

不法行為というのは,交通事故もそうですし,誤って,他人の物を壊してしまったとか,誤って他人に損害を与えた場合に広く使われる法律構成です。

 

 

どういう場合に不法行為が成立するかというと,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」場合です。

 

 

まず,行為が違法であること(「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」)が必要です。

 

 

たとえば,ボクシングなどでは,顔が切れたり,鼻が折れたり,脳振盪を起こしたりします。

しかし,ボクシングは,「殴り合う競技」であり,選手は当然殴られることを承知の上でやっています。

ですから,ボクシングで相手を殴ることに違法性はありません。

 

 

他のスポーツも同様で,「通常その競技で予定されている行為」は違法ではありません。

サッカーで足を引っかけてしまうことは幾らでもあることであり,反則をとられたとしても違法ではありません。

足を引っかけられただけで裁判していたら誰もサッカーをしなくなるでしょう。

問題はその競技で「通常予定されている行為」かどうかです。

 

 

仮に,野球の試合で打者がバットでピッチャー殴ればどうでしょうか。

野球の競技として通常予定されている行為ではありませんね。

これは違法な行為です。

 

 

では,今回のケースはどうでしょうか。

サッカーなので足と足が当たるのは当たり前,といえるかも知れません。

 

 

しかし,今回の事案では,男性はすねを骨折したのですが,同時にすねを守るための「すねあて」(レガース)も割れていました。これらの事実から相当衝撃が強かったことが推測されます。

 

 

また,サッカーでは,シューズの裏を相手に向ける行為は危険な行為として禁止されています(サッカーのルールでは,接触しなくてもシューズの裏を相手に向けるだけでファウルになります)。

 

 

判決を読むことはできていませんが,裁判所は,上記のようなことを考慮して,今回の行為については,極めて危険な行為であり「サッカー競技として通常予定されていない行為」と判断して違法性を認定したのではないでしょうか。

 

 

 

 

HPVワクチン薬害大阪訴訟第2回口頭弁論期日のご案内

 

■日時:平成29年2月14日(火)14時~15時

■場所:大阪地方裁判所本館2階大法廷(202号法廷)

■サポーター・傍聴希望者集合

○時刻:13時15分

○場所:大阪地裁本館南側玄関前

  • 傍聴案内ダウンロードはこちら
  • 傍聴希望者は13:30までに裁判所本館南側玄関に集合して下さい。
  • 傍聴券の抽選に外れた方のために、弁護団が裁判の様子を分かりやすく説明します。
  • 裁判終了後には、弁護団による報告集会を予定しています。

【当日のスケジュール】※サポーター・傍聴希望者の方

13時15分   大阪地裁本館南側玄関前集合

13時20分ころ 原告団・弁護団入廷行動

13時30分   傍聴整理券交付・傍聴券抽選

抽選に外れた方はAP大阪淀屋橋4階Bルームへ
弁護団が 弁護団が 裁判 の様子を 分かりやすく説明します。

14時00分   第2回期日開廷(15時終了予定)

14時30分 弁護団による裁判の様子の説明(AP大阪淀屋橋4階Bルーム)

15時00分   閉廷(予定)

15時30分ころ 報告集会(AP大阪淀屋橋4階Bルーム

16時30分ころ 報告集会終了(予定)

 

【地図】

大阪地方裁判所

大阪市北区西天満2-1-10 地下鉄・京阪本線淀屋橋駅下車1番出口から徒歩約10分

AP大阪淀屋橋

大阪市中央区北浜3-2-25 京阪淀屋橋ビル4F
淀屋橋駅地下連絡通路17番出口から直結

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170214 大阪訴訟第2回期日傍聴案内
170214 大阪訴訟第2回期日傍聴案内.pdf
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IR整備推進法成立

昨年12月,カジノ法ともいわれる「統合型リゾート施設整備推進法」が成立しました。

もっとも,この法律で決まったことは「統合型リゾート施設の整備を進めることにする」ということだけであり,政府が1年以内を目処に具体策を定めた法律案を作ることになっています。

 

 

この法律については賛否両論(世論調査では反対の方が多いようです)ですが,法律的観点から検討したいと思います。

 

 

まず,法律は国会で作るものであり,今回,国会で法律が成立したのですから,憲法に違反しない限り「法律問題」ではないともいえます。

 

 

ただし,刑法という重要な法律では「賭博」が禁止されており,刑罰も定められていますから,「この法律は刑法との関係でどう考えたらよいのだろうか」という疑問が湧いてきます。

 

 

まず,そもそも,なぜ賭博は法律で禁止されているのでしょうか。

 

 

最高裁は,このように述べています。

「国民をして怠惰浪費の弊風を生じさせ,健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風(憲法27条1項参照)を損なうばかりでなく,甚だしきは暴行,脅迫,強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える虞すらある」(最高裁昭和25年11月22日判決)

 

 

つまり,「国民が賭博に夢中になって働かなくなったら困る」「イカサマ賭博などで喧嘩がおきたり,お金欲しさに強盗に走ったりしたら困る」ということのようです。

 

 

では,公営ギャンブルはなぜ許されるのでしょうか。

 

 

この点については,昭和40年4月6日の東京高裁判決では,「公共機関の厳重,公正な規制のもとにおける射幸心の発露は害悪を比較的些少にとどめ得る」と述べられています。

 

 

つまり,公的な機関が運営することで,不正が防止できるし,ギャンブル依存症になったりする人は少ないだろうから大丈夫だ,と言っているんです。

 

 

しかし,実際はどうでしょうか。ギャンブル依存症は社会問題になっています。

 

 

果たして,カジノはギャンブル依存症を増やしてしまわないのか,公的な機関が運営するのか(公的機関ではノウハウがないのでできないのではないかとの指摘もあります。)など,今後策定される具体的な法律の中身が重要になります。

 

 

 

 

HPVワクチン薬害訴訟 「全国疫学調査」に対する弁護団コメント(詳細版)

2016年12月26日発表の『青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状』の受療状況に関する全国疫学調査』(全国疫学調査)結果報告に対する、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団のコメント(詳細版)は、次のとおりです。

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HPVワクチン薬害訴訟

昨年12月14日、HPVワクチンの接種で被害を受けた女性たちが、国とグラクソ・スミスクライン社、MSD社を被告として、東京・名古屋・大阪・福岡の各地方裁判所に提訴しました。同年7月27日の全国一斉提訴に続き、今回が第2次の提訴となりました。

今回の第2次全国一斉提訴で、東京25名・名古屋5名・大阪7名・九州20名の合計57名が新たに原告に加わり、全国の原告数は総勢で119名となりました。

大阪では、二次提訴原告ご本人やご家族を中心に入廷行動を行い、弁護団が記者会見を開きました。大阪訴訟では2次提訴で7名の原告が加わり、1次提訴と合わせて原告23名となりました。どうか今後ともご支援下さい。

ジミー・ペイジ氏演奏せず

先日,東京で行われた「クラシックロックアワード」というイベントで,世界三大ギタリストの1人といわれるジミー・ペイジ氏が演奏しなかったことが話題になりました。

 

 

イベント告知のポスターには,ジミー・ペイジ氏の名前が大きく書かれており,ホームページなどでは「世界3大ギタリストの2人,ジェフ・ベックとジミー・ペイジは,日本初共演を果たすことになり・・」などと書かれていたそうです。

 

 

しかし,実際のイベントでは,ジミー・ペイジ氏は賞のプレゼンターとして登場したものの,氏の演奏はなかったとのことです。

 

 

そのため,「詐欺だ」,「チケット代を返せ」などの声が上がりました。

 

 

これに対して,当初,主催者側は,「本番直前にジミー・ペイジ氏の意向により演奏が行われなかった」,「ジミー・ペイジ氏の単独ライブではなくイベント自体は成立している」として,チケット代の返金には応じられないと述べました。

 

 

この点,法律的にはかなり難しい問題です。消費者契約法により契約を取り消せないかが問題となります。

 

 

消費者契約法4条1項1号によれば,事業者が「重要事項についての事実と異なることを告げ」て,消費者がそのことを信じて契約をした場合には,その契約を取り消せることになっています。これを「重要事項についての不実告知」といいます。

 

 

今回の事案では,イベントのオフィシャルページに「参加アーティスト」として,ジミー・ペイジ氏の名前が挙がっていますし,ポスターにも大きく名前が載っていて,「ロック・レジェンドたちによる夢の響演」などと謳っています。

 

 

これらの事情からすれば,あたかもジミー・ペイジ氏が演奏するかのように宣伝していますので,「重要事項についての不実告知」に該当しそうです。

 

 

しかし,チケット業者のウェブページなどを見ますと,「内容は一部変更になる場合があります」などと記載されています。このような点も考えると,直ちに契約を取り消せるかは微妙です。

 

 

もっとも,その後,主催者は,「イベントに失望された来場者」にはチケット代を返金すると発表したそうです。

 

 

 

 

次期リーダー講習会

平成28年11月23日,ロータリークラブの仕事で豊岡に行きました。

 

今年度、私は宝塚ロータリークラブの「青少年奉仕委員会」の委員長を務めていて、来年に行われる「インターアクト地区年次大会」の実行委員長も兼務しています。

 

「インターアクトクラブ」とは、ロータリークラブにより提唱された、12歳から18歳までの青少年または高校生のための社会奉仕クラブです。

 

今回は、インターアクト地区年次大会の関連事業である「次期リーダー講習会」に参加しました。

 

兵庫県内のインターアクト部の部員が豊岡に集まり、畑での野菜の収穫やグループに分かれてのワークショップなどが行われました。

 

生徒たちは少々照れながらも和気藹々と他の学校の生徒と交流を深め、ほんの少しかもしれませんが、リーダーの素質を身につけたのではないでしょうか。

 

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HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害大阪訴訟第1回口頭弁論が行われました

118日、大阪地方裁判所において、大阪訴訟第1回口頭弁論期日が開催されました。

 

たくさんの報道陣に囲まれて、原告、弁護士及び支援者の方が法廷に入って行きました。


法廷は202号大法廷です。傍聴希望者多数のため、傍聴券は抽選となりました。
原告席、被告席そして傍聴席全て満席の状態で開廷されました。


原告の訴状陳述及び被告の答弁書陳述の後、原告本人(被害者本人)による意見陳述が行われました。
原告の意見陳述は、冷静でかつ力強く、本人の心の叫びといえる内容でした。
原告らはもちろんのこと、裁判官もしっかりと原告の顔を見つめて聴いていました。


原告の意見陳述の後は、原告弁護団による訴状の内容についてのパワーポイントによる説明が行われました。


民事裁判でパワーポイントを利用するのは異例のことですが、関心を持って参加されている傍聴席の方にも分かりやすいように、原告側が裁判所に申し入れて実現しました。

パワーポイントによる説明では、本件薬害の被害の深刻さ、本件ワクチンの効果が極めて限定的であること、本件ワクチンの危険性が重大であること、本件ワクチンの承認などの経緯が杜撰であったことなどを分かりやすく解説しました。

閉廷後は、進行協議と記者会見が行われ、原告、弁護士、支援者による報告集会が開催されました。

報告集会では、傍聴券の抽選に外れた方のための期日内容の報告や原告同士の交流などが行われ、今後の裁判も全力で戦っていく決意を再確認しました。

 

口頭弁論終了後は、報告集会を行いました。

 

 

 

 

大阪の次回期日は2月14日です。

 

  

■HPVワクチン薬害大阪訴訟第2回口頭弁論期日

 

日時:2017214日午後2時開廷

場所:大阪地方裁判所2階大法廷

 

 

 

職場での旧姓使用

 

先日,職場での旧姓使用に関する判決が東京地裁でありました。

私立学校の教員が職場での旧姓使用を認めるように求めていた訴訟です。

判決は学校側の言い分を認めて教員の請求を棄却しました。

 

 

最近,旧姓使用の問題や夫婦別姓の問題などがかなり議論されています。

 

 

東京地裁の判決を解説する前に,昨年12月に出された夫婦別姓に関する最高裁判決を見ておきましょう。

この裁判は,夫婦別姓を認めていない現行民法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた裁判です。

 

 

最高裁は,夫婦別姓を認めていないことは憲法には違反しないとの判断を示したのですが,その理由の一つとして,旧姓を通称として使用することが社会的に広まっているので,夫婦別姓制度を導入しなくてもそれほど不利益はない,ということを述べています。

 

 

実際,国家公務員では平成13年に旧姓使用が認められていますし,東京都立の学校では平成14年に認められています。弁護士も旧姓使用は認められていますし,3年ほど前に一部上場企業などを対象としたアンケートでは旧姓使用を認めている企業の割合は64.5%だったそうです。

 

 

まさに旧姓使用は「社会的に広まっている」といえるでしょう。

 

 

では,今回の東京地裁の判決を見てみましょう。

 

 

今回の判決は,旧姓について,「個人が結婚前に築いた信用,評価の基礎となるもので,通称として使う利益は法律上保護される」と認めています。

しかし,「医師など旧姓が認められない国家資格も多数ある。」,戸籍上の氏は旧姓に比べて,「より高い個人識別機能がある」等を理由として「旧姓が戸籍名と同じように使われることが社会で根付いているとまでは認められない」と述べました。

 

 

判決文全文を読んだわけではないのですが,さきほどの最高裁判決と比べると若干違和感があります。

 

 

最高裁は旧姓使用が社会的に広まっていることを理由の一つとして,夫婦別姓制度がなくても不利益は大きくない,と述べていましたので,今回の判決は最高裁の認識と整合性がないように思えます。

 

 

教員は控訴するとのことですので控訴審にも注目したいと思います。

 

 

 

 

ワンセグのNHK受信料

今年の8月に,ワンセグのNHK受信料についての判決のニュースがありました。

テレビを設置せず,ワンセグ付きの携帯電話を所有しているだけでNHKの受信料を支払う義務があるかについて争われた裁判です。

(埼玉県朝霞市の市議会議員が訴えていました。)

 

 

さいたま地裁は受信料を支払う義務はないという判決を下しました。

 

 

NHK受信料については放送法に規定があります。

放送法64条1項によれば,NHKを見ても見なくても,NHKを受診できる「受信設備を設置した者」は,受信契約をしなければならないとされています。

 

 

よく「俺はNHKを見ないから受信料は払わない。」という人がいますが,法律上は,家にテレビを置いていれば払わないといけません。

 

 

では,ワンセグはどうでしょうか。ワンセグというのは携帯電話でテレビが見られる機能です。

 

 

テレビはテレビなので受信料を支払う義務がありそうにも思えます。

 

 

裁判で争点となったのは,放送法64条1項の「受信設備を設置した者」の「設置」の部分です。

「設置」という言葉からはどういうイメージが浮かぶでしょうか。

携帯を持ち歩くことは「設置」でしょうか。

 

 

まさにこの点が争点でした。

訴えた人は,携帯電話のワンセグは「設置」ではないと主張しました。NHKは「設置」とは「受信設備を使用できる状態に置くこと」だと主張しました。

 

 

結論的に,判決は,NHKの主張は「相当の無理がある」と言って退けました。

 

 

法律家として興味があるのは,判決が用いた理論構成です。

判決は受信料について,「放送視聴の対価ではなく,NHKの維持運営のために徴収権が認められた特殊な負担金」であると指摘し,「税金に準じる性格」があるため,契約締結義務の要件は明確でなければならない,と述べました。

 

 

少し難しいですが,「租税法律主義」という原則があります。日本国憲法84条に規定されている原則であり,税金を取るためには法律を制定しなければならない,そして,その法律は要件が明確でなければならないという原則(課税要件明確主義)です。

 

 

どういう場合に税金を払わないといけないかが,いい加減な決め方では困りますよね。権力者が「この人は嫌いだからたくさん取ろう。」とかいうのでは困ります。

だから課税要件は明確でなければならないということです。

 

 

さて,今回の判決の話に戻ります。

判決は,NHKの受信料を税金に似ている,と述べたわけです。

NHKは常日頃,「受信料は公共放送の維持のためです。」と言っていますね。

裁判所はその点を上手く利用したようにも思えます。

 

 

そして,受信料は税金に似ているから,どういう場合に受信料を徴収するのかは明確でないといけない,そして,「設置」という言葉の意味として明確に「携帯」電話が含まれるのかというと「相当無理がある」という結論を導いたのです(放送法2条14号で「設置」と「携帯」を使い分けていることも理由にしています。)。

 

 

 

 

HPVワクチン薬害訴訟提訴

 

7月27日、全国4地裁で一斉提訴を行いました。大阪地裁では16名が提訴しました。

 

14時半に大阪地方裁判所に入廷し、15時より記者会見を行いました。

 

記者会見では、3名の原告(被害者)本人が出席し、提訴に踏み切ったお気持ちを訴えまし  た。

 

会見には多数のマスコミが参加し、関心の高さと被害者への共感が伝わってきました。

 

 

HPVワクチン薬害訴訟とは

 

「子宮頸がん予防ワクチン」とのふれこみで接種されたHPVワクチンによって深刻な副作用被害が発生し,多くの被害者が今なお苦しんでいます。

 

被害者は,2013年3月に「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を結成し,多くの方の支援を得て活動動宮頸がんし,2015年3月には全面解決要求書を国と企業に提出していますが,真の救済や再発防止にはほど遠い状況です。

 

訴訟により国と企業の法的責任を明確にし,それを基盤に真の救済と再発防止を実現していきたいと考えています。

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18歳未満の選挙運動

 

18歳以上の選挙権の行使が認められるようになり,新たに約240万人の有権者が投票できるようになりました。

 

 

18歳,19歳といえば,ツイッターなどのSNSの世代ですね。

ツイッターなどで気に入った候補者を応援するメッセージを投稿したりするなどの行為が広がったとのことです。

 

 

未成年者は今まで「選挙運動」ができませんでしたが,今回の法律改正で「18歳以上」であれば選挙運動ができるようになりました。

しかし,「18歳未満」は改正後も「選挙運動」ができません。

 

 

そもそも,「選挙運動」とは何でしょうか。

選挙運動とは「特定の選挙について,特定の候補者の当選を目的として,投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

要するに,選挙で候補者を応援することですね。

 

 

どうして未成年者は選挙運動を禁止されていたのでしょうか。法律改正後も,どうして18歳未満の人は選挙運動ができないのでしょうか。

 

 

一般的に言われているのは,「選挙に出る人や候補者を応援する人にはいろいろな思想の人がいて,未成熟な子供が選挙運動に巻き込まれると一定の思想に洗脳されてしまい,正常な判断ができなくなるおそれがある」ということです。

 

 

以前お話しした「パターナリズム」です。国家が,未熟な子供を守ってあげるという考え方です。

 

 

一例を挙げれば,未成年者の喫煙や飲酒の禁止がそうです。大人はいいけれども,未成年者が喫煙や飲酒をすると身体の成長にも悪いし,子供は正しい判断ができず飲む量をコントロールできないから法律で禁止するということです。

 

 

しかし,18歳未満の選挙運動を禁止するというのは少し違和感を覚えます。

選挙運動は,憲法で認められた民主主義を支えるための重要な活動です。

安易に禁止するべきではありません。

 

 

しかも,タバコや飲酒の禁止には罰則規定がありませんが,18歳未満が選挙運動をすれば罰則があります。

(※1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金と5年間の選挙権停止)

 

 

未成年者が喫煙や飲酒をしても罰則がないことの理由としては,「未成年者を守るための法律だから」だと言われています。

そうすると,同じく未成年者を守るためといいながら,選挙運動の禁止には罰則があるというのは不思議です。

 

 

このように現行の公職選挙法は,個人的には少し疑問に思っています(他にもありますが省略します)。

新しく有権者になられた18歳以上の方達は,しっかりと投票に行って欲しいのはもちろんですが,これを機会に公職選挙法や憲法についても勉強してもらえればと思います。

 

 

 

地震によるブロック塀の倒壊

 

 

熊本の震災は大変心が痛みます。

個人的には義援金を送るくらいしかできずもどかしい限りです。

 

 

私にできることは法律の話くらいですので,今回は,いつ来るか分からない地震に備えて,地震と関連する法律の話をしたいと思います。

 

 

たとえば,地震により自分の家が倒壊したりブロック塀が倒れて他人が怪我をした場合,誰がどういう責任を負うのでしょうか。

 

 

まずは,民法717条の「土地工作物責任」が問題となります。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵がある」ことによって,他人に損害を与えたときは,その工作物の占有者又は所有者が損害を賠償しなければならない,と規定されています。

 

 

「瑕疵」とは簡単に言うと「欠陥」のことです。「瑕疵」があるとは,その物が通常備えているべき安全性を備えていないことをいいます。

 

 

たとえば,(土地の工作物ではないですが)椅子であれば,人間が座って壊れるようなものは「通常備えているべき安全性を備えていない」といえますが,「象が乗っても壊れない」ことまでは要求されていないでしょう。

 

 

では,建物やブロック塀などは,どの程度の安全性が必要なのでしょうか。

 

 

これに関しては有名な裁判例があります。

昭和53年に発生した宮城県沖地震によって,ブロック塀が倒れて通行人が亡くなった事故があり,亡くなった方の遺族が裁判を起こしました。

 

 

これについて仙台地方裁判所が一つの基準を示しました。

その基準とは,「仙台市近郊において通常発生することが予測可能な地震動に耐えうる安全性があるか否かで判断する」というものです。

 

 

そして,当時,仙台では,過去に震度6以上の地震の観測例がなかったので,震度5程度が予測可能な地震であり,震度5程度の揺れに耐えられる強度があれば責任がないと述べました。

(結論として,その場所で震度5を超える揺れがあった可能性があるとして責任を否定しました。)

 

 

しかし,これはあくまで一例ですので,阪神淡路大震災や東北大震災で震度7を記録した地域などで,今後,同様の事故が起きた場合には,「震度7まで耐えられる強度が必要だ」との判断が出る可能性もあります。

 

 

以上は建物の占有者と所有者の責任の話ですが,この他に,建物を建てた業者の責任が生じる場合があります。

 

 

建築確認の基準を満たしていなかったり,手抜き工事による欠陥があったりした場合には,施工業者へ責任を追及することができます。

 

 

この場合,被害を被った被害者が直接施工業者へ責任を追及することができる場合もありますし,先に述べた「土地工作物責任」を追及されて損害賠償を支払った工作物の占有者や所有者が施工業者に責任を追及できる場合もあります。

 

 

 

 

イベント会場近くでの落雷

 

 

先日のニュースで,音楽イベントが開催されたときに,イベント会場の近くで雷に撃たれて亡くなられた方の裁判の判決がありました。

 

 

遺族であるご両親がイベント会社に対して損害賠償を求めた裁判です。

大阪地裁は遺族の請求を退けました。

 

 

報道によると,裁判所は「落雷については抽象的には予見できたが具体的な予見は無理だった」「野外での落雷回避は自己責任」「コンサート会場から距離があったので避難誘導をする義務はなかった」などと述べているようです。

 

 

これに対しては,ご両親は「自己責任というが一体どこに非難しろというのか」というコメントを述べたとされています。

 

 

なかなか難しい問題です。この判決が妥当かどうかというのは判決文を見ていないので簡単には答えられませんが,参考になる判決があります。

 

 

平成8年にサッカー大会の試合中に高校生が雷に打たれて重い障害が残った事故がありました。

被害者が通っていた高校(私立)と大会主催者に対して裁判を起こしました。

 

 

この裁判は,被害者が一審(平成15年)も二審(平成16年)も敗訴しましたが,最高裁で審理のやり直しを命じられ(最高裁平成18年3月13日判決),その結果,被害者の逆転勝訴になりました。

 

 

つまり,裁判官でも判断が分かれるほど難しい事案だったということです。

 

 

一審と二審は,雷がグラウンドに落ちるということを予見するのは難しいだろうと述べました。

 

 

しかし,最高裁は,雷鳴が聞こえていたなら雷がいつ落ちてもおかしくはないと考えないといけないと述べました。

 

 

サッカーの事案も今回の事案も大変難しい事案です。

 

 

ただ,この2つの事案を比べてみると,サッカーの試合のほうは,サッカーをしている試合の最中にピッチの上で雷に撃たれています。

今回の事故はコンサート会場の外であるというところが,やはり大きな違いなのではないかと思います。

 

 

 

 

交通事故・過失割合

交通事故の過失割合は誰が決めるのでしょう?

 

 

保険会社が決めると思っていませんか?

保険会社が「7対3」といえば,「そういうものなのか。」と簡単に納得していませんか?

実は,保険会社には過失割合を決める権利なんてありません。

 

 

過失割合を誰が決めるかというと,まずは「当事者」が交渉して決めます。

「過失割合を当事者が決める。」というと違和感があるかも知れませんが,「あなたにも3割程度の過失があるでしょう。」「そうですね。それくらいはあると思います。」という感じで合意できれば,「7対3」で決まるのです。

 

 

では,当事者で合意できなければどうなるのでしょうか?

この場合,「裁判所」が決めます。

裁判所はどうやって決めるのかというと,事故当時の道路状況,交通量の状況,見通しが良いか悪いか,事故に至った経緯,速度超過などの違反の有無等を総合して決めます。

 

 

つまり,裁判で事故の状況などについての証拠を十分に審理し尽くして裁判所が決定するのです。

ですから,裁判所でもない保険会社が決められるわけはないのです。

 

 

保険会社が提示する「過失割合」は,あくまで,これまでの裁判例を分析して類型化したモデルの中で近いものにあてはめているに過ぎません(しかも,通常,保険会社にとって有利になるモデルを選びます。)。

 

 

このように,保険会社が提示する「過失割合」というのは,あくまで保険会社の「考え」に過ぎません。

納得いかない場合は,必ず弁護士に相談すべきです。

 

 

 

自賠責保険が適用される「運行」とは

自賠法では,「自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合」に保険金が出るとされています(自賠法1条)。


そして,「運行」とは,「人又は物を運送するとしないとにかかわらず,自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。」とされます(自賠法2条2項)。


これでは抽象的で分かりにくいですね。


エンジンを掛けて走っているときの事故だけなのか?サイドブレーキがゆるくて動き出したときの事故はどうなのか?コンクリートミキサー車のミキサーの回転で事故をしたらどうなのか?


学説には,原動機説(原動機の作用により自動車を移動させること),走行装置説(原動機装置の他にハンドル装置,ブレーキ装置等の走行装置も含まれる),固有装置説(走行装置だけでなく,クレーン車におけるクレーン等特殊自動車等に固有の装置を使用することも含む),車庫出入説(車庫を出てから車庫に格納されるまでであれば途中の駐車や停車も含む)等の複数の説があります。


最高裁判例は固有装置説を採用しています(昭和52年11月24日判決)。


したがって,サイドブレーキの緩み,走行停止中のクレーン車のクレーン操作,走行停止中のミキサー車のミキサーの回転等が原因による事故には自賠責保険の適用があります。

 

 

 

交通事故・人身(慰謝料)

慰謝料には,傷害慰謝料(入通院慰謝料ともいいます),後遺障害慰謝料,死亡慰謝料があります。


傷害慰謝料は,怪我をして痛い思いをしたり不便な生活を送ることで苦痛を感じたりすることに対する慰謝料です。通常,入院期間と通院期間を基準にして算定されます。


後遺障害慰謝料は,後遺障害が残った場合に,後遺障害により不便な生活を強いられたり,思うように仕事ができなくなることの苦痛に対する慰謝料です。通常,後遺障害等級を基準にして算定されます。


死亡慰謝料は,死という苦痛に対する慰謝料です。実際は遺族が請求することになります。

 

 

 

交通事故・人身(死亡による逸失利益)

死亡による逸失利益は基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し(亡くなったことにより生活費がかからなくなるので),働けるはずであった年数(就労可能年数といいます)をかけます。


ただし,そのままでは金利の分だけもらい過ぎになるため金利の分を逆算して控除します(中間利息控除といいます)。

 

 

 

交通事故・人身(後遺障害による逸失利益)

逸失利益とは,事故による後遺障害が残った場合,将来にわたって収入が減少する可能性が高いので,その分を埋め合わせる損害項目です。


具体的には,従前の収入の額,後遺障害等級などによって異なってきます。


収入が多いほど,後遺障害等級が重いほど,金額は高くなります。

 

 

 

交通事故・人身(休業損害)

交通事故のため休業して,休業によって収入が減少した額が明確な場合はその額が損害額となります。


収入の減少額が明確に分からない場合は,「基礎収入」に「休業期間」をかけて算定します。


「基礎収入」は,一般的には次のように決めます。
給与所得者・・事故直前3か月の平均収入
事業所得者・・事故直前の申告所得額
家事従事者(主婦)・・女性の平均賃金

 

 

 

交通事故・人身(付添看護費)

入院または通院の付添看護費は,医師の指示があった場合または症状の程度などから付添看護が必要と認められる場合に請求できます。


ですから,例えば,病院から,「うちは完全看護ですから付添は必要ないですよ」と言われている場合は,認められない可能性が高いといえます(但し,例外もあります)。


付添看護費が損害として認められる場合の損害額は,プロの付添看護を頼んだ場合は,実費(ただし,不必要に高い部分は認められない),近親者の場合は,大阪地裁の基準では,入院1日あたり6000円,通院1日あたり3000円です。

 

 

 

交通事故・人身(交通費)

交通費は,基本的に,入退院・通院にかかった実費を請求できます。


ただし,タクシー代は,障害の程度や交通の便からみて相当性がない場合(タクシーでなくても通院できる場合)には請求できません。


この場合,公共交通機関を利用した場合の料金を請求できます。


自家用車での通院の場合,ガソリン代を請求できます。一般的には,1kmあたり15円というのが相場です。

 

 

 

経歴詐称について

 

 

「経歴詐称」ということがよく話題になります。

今回は経歴詐称が犯罪になるかについて考えてみましょう。

 

 

経歴詐称というと「詐欺罪」が頭に浮かぶかもしれません。

「詐称」の「詐」の字は詐欺の「詐」ですからね。

 

 

「詐欺罪」というと、どういうイメージでしょうか。

「嘘をつく」「騙す」というイメージですね。

 

 

実は、嘘をついただけでは詐欺罪にはなりません。

嘘をついて財産的な利益を得た場合に詐欺罪になります。

 

 

たとえば、全く根拠がないのに「がんが治る薬だ」と言って薬を売ると、嘘をついて金銭を得ているので詐欺罪です。

 

 

それでは、経歴詐称が詐欺罪になるか考えてみましょう。

経歴を偽って、テレビに出演する契約をして金銭を得ているから詐欺罪になりそうにも思えます。

 

 

しかし、話はそう簡単ではありません。

詐欺罪が成立するためには、嘘と結果との間に因果関係が必要です。

 

 

つまり、金銭を渡した人が「嘘を信じたから金銭を渡した」という関係が必要なのです。

経歴詐称でいいますと、経歴を信じたから契約したという関係が必要です。

そして、契約するに至った主要な理由がその嘘であることが必要です。

 

 

ですから、たとえば、テレビ局がその人の経歴を信じて、それが主要な理由で契約したわけではなく、その人が各方面で活躍していることやその人の才能や魅力に注目して契約した、というのであれば、詐欺罪は成立しません。

 

 

このように「経歴詐称」といっても、それだけでは詐欺罪かどうかは判断できないのです。

経歴を信じたことにより騙されて金銭などの財産的な利益を与えたと判断されれば、経歴詐称でも詐欺罪が成立することはあり得るでしょう。

 

 

 

 

交通事故・人身(入院雑費)

交通事故に遭い入院すると、どうしてもこまごましたものを購入することになりますよね。


そのような費用も交通事故に遭ったから必要になったわけですので、請求できます。


ただし、何百円のレシートをすべてとっておいて請求するのも大変だし、レシートを出されても、入院のために必要になった費用なのかどうか審査するのも大変です。


そこで、一つ一つを証明するのではなく、平均的な費用を「入院雑費」として請求することになっています。入院雑費の基準は大阪地裁では1日あたり1500円です。

 

 

 

交通事故・人身(治療費)

治療費・入院費は必要かつ相当な実費を請求できます。


何が必要かつ相当かというのは微妙なのですが,ごくおおざっぱに言えば,医師がその治療が必要と考えるかどうかで決まります。


整骨院・接骨院などの施術費は,医師の指示による場合には認められる傾向にあります。


医師の指示がない場合であっても,症状に対して有効かつ相当と認定されれば認められる場合がありますが,簡単には認められないので注意が必要です。

 

 

 

交通事故・物損(レッカー代・慰謝料)

事故によって必要になったレッカー代は一般的には認められます。


慰謝料は物損の場合、残念ながら認められません。
とても愛着のある車が傷付いて悲しいと言っても、認められないのです。


愛着のある車(車に限りませんが)が壊されれば悲しい思いをするのは当然なのですが、日本では慰謝料をあまり広く認めないという裁判文化があります。
「悲しみ」という主観的なものを測る物差しがないので致し方ないのかもしれませんが・・・

 

 

 

交通事故・物損(休車損害)

今回は休車損害について。


営業用車両が修理のために使用できず、それによって利益が減少した場合に利益の減少分について認められます。


もっとも、前回書いた代車使用料が認められる場合には、休車損害は認められません(これを認めると二重にもらうことになってしまうため)。

 

 

 

交通事故・物損(代車使用料)

今回は代車使用料について。


事故により代車を使用する必要性があり、実際に利用した場合に認められます。


しかし、一般的には、修理期間として通常必要な期間の分しか認められません(2週間〜1か月程度しか認められないことが多いです)ので、早めに修理に出すべきです。

 


必要な期間を超えて利用していたと認定されると、自腹を切ることになってしまいます。

 

 

 

交通事故・物損(評価損)

評価損とはいわゆる格落ちのことで、事故歴による商品価値の低下です。


評価損は必ずしも認められるものではなく、否定される場合もあります。
通常、損傷の程度、修理内容、修理額、初年度からの経過期間、走行距離、車種などを総合考慮して決められます。

 

 

 

交通事故・物損(車両修理費)

被害者は、基本的に修理額相当額を請求できます。実際に修理してから請求してもいいし、修理する前の見積の段階で請求することもできます(もっとも、不当に高い見積は否定されます)。


しかし、修理代が車両の時価額を上回る場合は、車両の時価額しか請求できません。


ですから、車両の時価額が100万円で、修理代の見積が200万円の場合、100万円しか請求できません。
こういう場合、愛着のある車であっても手放さざるを得ないこともあります。

 

 

 

交通事故「駐車中の事故」

駐車中の事故について


駐停車中の事故に自賠法が適用されるでしょうか?
自賠法1条の「運行によって」と言えるかどうかの問題(「運行起因性」といいます)です。


まず,特殊自動車が停車中に装置を操作をしていた場合(例えばクレーン車のクレーン),捜査中の事故は運行起因性は認められます。


次に,駐停車中のドアの開閉による事故も「運行起因性」が認められます。


さて,駐停車中の荷積み荷下ろし中の事故はどうでしょうか?


これは判例が分かれています。

 

 

否定判決(最高裁昭和56年11月13日判決)と肯定判決(最高裁昭和63年6月16日)があります。
判決が分かれた理由はかなり微妙ですが走行との連続性や荷台の性質などを考慮して判断しているものと思われます。


駐停車車両への追突の場合,駐停車車両は「運行によって」と言えるでしょうか?
言い換えると,追突された駐停車車両に過失割合が認められるでしょうか?


この点について,従来は,追突したほうが100%と言われていましたが,近年は状況を総合的に判断してきめ細かい認定がなされる傾向にあります。


例えば,駐停車禁止区域である場合,ハザードランプを点滅させていない場合,見通しの悪い場所で駐車していた場合などには1割〜3割程度の過失が認定されています。

 

 

 

交通事故における「信頼の原則」

最近,当事務所において交通事故案件を扱うことが増えてきています。

 

 

なので,何回かに分けて交通事故について書いていこうと思います。

 

 

今回は,「信頼の原則」について

 

 

交通事故において「信頼の原則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?


判例によると,信頼の原則とは「他の交通関与者が交通秩序に従った適切な行動を取ることを信頼するのが相当である場合には、その者の不適切な行動によって生じた交通事故について加害者たる交通関与者は責任を負わない」ものと説明されています。


具体的には,交通ルールに則って周りを注意して運転していても,相手が通常では予想できないような避けられないような動きをした場合には,過失がない(過失割合がゼロ)ということになります。


ここで,重要なのは,まず,基本的に自分が「交通ルールに則っていること」が必要です。


「急な飛び出しだから避けられなかった」と主張をしても,制限速度50キロメートルの道路なのに自車が70キロメートルを出していた場合,「制限速度を守っていたら避けることは可能だった」と認定される場合があります。


次に,相手が「通常では予想できない」動きをした場合に限られます。ここでいう「通常」とは,相手の属性によって異なります。


例えば,小さな子供が歩行していた場合,子供は不用意に車道にはみ出すことが「通常」あり得ます。
このような場合,「子供が飛び出すはずはないと思った。」と言っても通用しません(過失はゼロにはなりません)。


このように,「信頼の原則」があるといっても,ドライバーには常に慎重な運転が要求されていますのでご注意ください。

 

 

「認知症事故,家族に賠償責任なし」の逆転判決

 

 

認知症の男性が電車にはねられて死亡した事故で,家族が賠償責任を負うかが争われていた裁判で最高裁の判決が出ました。

 

 

最高裁は,死亡した男性の妻に賠償責任を認めた2審の名古屋高裁判決を破棄し,賠償責任を否定する判決を言い渡しました。

 

 

この裁判の争点は「責任無能力者の監督義務」(民法714条)です。

 

 

「責任能力」というと,以前,小学生が蹴ったボールを避けようとしてバイクが転倒した事件についてお話ししたときにも説明しましたね。

 

 

「責任能力」とは「自分の行動の結果,どのような責任が発生するか理解できる能力」といわれています。

認知症といっても程度は様々ですから,認知症であれば責任能力がないということではなく,重度の場合に責任能力が否定されます。

 

 

今回の件では,男性は重度の認知症で責任能力がなかったと裁判で判断されました。

 

 

そして,責任能力がない人が誰かに損害を与えた場合には,その人を監督する法定の義務を負う者(法定の監督義務者)が賠償責任を負うことになっています(民法714条1項本文)。

もっとも,法定の監督義務者がその義務を怠らなかったことを証明すれば賠償責任を負いません(同条項ただし書き)。

 

 

たとえば,未成年者の場合,基本的に親が「法定の監督義務者」です。民法820条に規定されています。

 

 

今回の件では,未成年者ではないので,同居していた妻と同居していない長男が,「法定の監督義務者」に該当するか否かについて争われました。

 

 

1審名古屋地裁では,妻は「法定の監督義務者」には当たらないが,「見守りを怠った過失がある。」と認定されました。長男は「事実上の監督者」だとして責任を認めました。

 

 

2審名古屋高裁では,妻は法定の監督義務者であるとして責任を認め,長男は法定の監督義務者ではないとして責任を否定しました。

 

 

名古屋高裁が妻を法定の監督義務者とした根拠は,夫婦の協力義務を定めた民法752条です。

 

 

1審,2審判決に対しては,「認知症の人は監禁しろというのか」などの批判の声が大きかったようです。

 

 

最高裁では,妻も長男も法定の監督義務者にあたらず賠償責任は負わないと判断しました。

この最高裁判決に対しては評価する声が高く,私も判決文を読みましたが結論には賛成です。

 

 

ただし,最高裁は,例外的に,日常生活の状況などによっては,「法定の監督義務者に準ずべき者」として賠償責任を負う可能性を示唆しています。

 

 

この点については,「例外的に賠償責任を負う場合がよく分からない」「積極的に介護にかかわればかかわるほど責任が認められやすくなるのではないか」という不安の声もあります。

 

 

また,「今回はJRという大企業だから感覚的に納得している人が多いけど,たとえば,認知症の人が他人を怪我させたり死亡させた場合でも誰も責任を取らなくていいのだろうか。」という声も聞かれます。

 

 

非常に難しい問題です。

高齢化社会が進んでいる中,今後も同様の問題が起きそうです。裁判で決着を付けるのではなく,社会全体で考えていかなければならないと思います。

 

 

  

覚せい剤が禁止されている理由

 

 

元プロ野球選手の覚せい剤所持及び使用の疑いの件が話題になっています。

元プロ野球選手の件については裁判も終わってないのでコメントは控えますが,今回は覚せい剤などの薬物の使用などが法律で禁止されている理由について考えてみたいと思います。

 

 

麻薬や覚せい剤の使用などは犯罪とされています。刑罰もかなり重いです。

なぜ,薬物の使用などは禁止されているのでしょうか。

 

 

理由は一つではありません。

法律学者によっても多少見解は異なりますが,4つくらいの理由が挙げられています。

 

 

まず一つ目。

薬物に依存してしまい,繰り返し使用することで身体や精神がボロボロになってしまう。

 

 

二つ目。

薬物の濫用による幻覚や妄想で重大犯罪を犯す場合がある。

少し違う理由ですが,薬物を入手するためのお金が欲しくて犯罪を犯す場合もあり,そのことを理由に挙げる学者もいます。

 

 

三つ目。

薬物が蔓延して多くの国民が薬物中毒になってしまうと,勤労意欲がなくなり,仕事をしなくなり,国家として成り立たなくなる,というもの。

 

 

四つ目。

暴力団の資金源になるというもの。

薬物の全てが暴力団ルートというわけではありませんが,暴力団がかかわっているケースが多いと言われています。

薬物の購入代金が暴力団の資金になるということと,薬物に依存してしまうと薬物の購入代金が必要となり,お金欲しさに薬物の売人になってしまい,そうするとさらに薬物が蔓延する,ということも言われています。

 

 

 

和歌山刑務所見学

平成28年3月3日、兵庫県弁護士会人権擁護会が主催する和歌山刑務所見学会に参加しました。

 

 

和歌山刑務所は女子刑務所です。また、F級と呼ばれる女子外国人受刑者も収容しています。

敷地面積は36,820㎡と、街中にあるにしては相当広いです。

 

 

見学は弁護士9名で参加しました。

最初に所長より施設の概要説明があり、その後、施設内を見学しました。

 

 

男子刑務所に比べて塀が低く、壁の色使いなども柔らかい印象を受けました。

 

 

施設では、刑務作業、職業訓練、一般改善指導、特別改善指導、教科指導等が行われています。

 

 

刑務作業の特色としては、洋裁等に力を入れているようです。

また、職業訓練としては、介護福祉科、美容科、販売サービス科、ビジネススキル科があり、女子受刑者の社会復帰を意識した内容になっています。

 

 

和歌山刑務所で特徴的なのは、敷地内に「白百合美容室」という美容院があることです。

ここでは、職業訓練の一環として美容師資格のある女子受刑者が一般のお客さんの髪を切っています。カットは1200円です。パーマもあります。常連のお客さんが多いらしいです。

 

 

最後に受刑者が作った製品の展示即売所に行きました。

あまり知られていませんが、受刑者の製品は品質が良く、「CAPIC」というブランドで売られています。

 

いい感じのペン立てがあったので購入しました。

 

 

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不動産会社による芸能人の情報漏洩

 

 

先日,大手不動産仲介業者の従業員が,有名な俳優と女優の夫婦が自分が勤務する店舗に賃貸物件を探しに来たことをツイッターに投稿したということが話題になりました。

 

 

法律上,どのような問題があるでしょうか。

 

 

まずは,宅地建物取引業法(いわゆる「宅建業法」)違反が問題になります。

大手不動産仲介業者は当然,宅建業法に規定された「宅建業者」に該当します。

 

 

宅建業法45条には,宅建業者は「正当な理由がある場合でなければ,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」と規定されています。

 

 

今回の件は「正当な理由」などあるはずはないですから,この規定に違反するでしょう。

 

 

この規定に違反した場合,宅建業者は場合によっては業務停止処分などもあり得ます(宅建業法65条2項2号)。

 

 

また,正当な理由なく秘密を漏らした従業員には刑事罰が規定されており(宅建業法83条1項3号),場合によっては50万円以下の罰金に処せられます。(ただし親告罪。83条2項。)

 

 

次に民事上の損害賠償責任が問題となります。

被害者である有名人夫婦が,秘密を漏らした従業員にプライバシーの侵害として損害賠償を請求することが可能だと思われます(民法709条)。

 

 

損害賠償の内容としては,この件で特にお二人の社会的評価が落ちるとは言いがたいので不愉快な思いをした慰謝料ということになろうかと思います。(請求しないとは思いますが・・・)

 

 

この場合,お二人は不動産仲介会社に対しても使用者責任(民法715条)を追及できます。

 

 

また,仮に,夫婦からの損害賠償責任の追及がない場合であっても,今回の件でずいぶん会社の信用は低下したのではないでしょうか。

会社としては従業員に対して,会社の信用を低下させたことを理由に損害賠償を請求することが可能だと思われます(もっとも会社が損害額を立証することは容易ではありませんが・・・)。

 

会社でのミスの責任

少し前になりますが,テレビコマーシャルで有名な引越社が,従業員が荷物を破損させた場合に,その損害額を従業員に負担させ,給料から天引きしていることがニュースで取り上げられました。

 
法律的には従業員のミスによる損害は誰が負担すべきかという点と,給料から天引きしてよいのか,の2点が問題になります。

 
最初の点ですが,ミスをしたのだから従業員の責任とも考えられます。
 

しかし,一度別の角度から考えてみましょう。
会社が利益を上げると,それは誰のおかげでしょうか。
 

例えば会社で1億円の利益を生む取引が成立したとして,契約成立の最後の場面で頑張った人の手柄でしょうか。
違いますよね。通常,多くの従業員の努力の結晶ですね。最後の場面で契約を締結した人が1億円を持って帰るのはおかしいですね。
そして,その利益は従業員や株主や経営者に分配されることになります。
 

それでは,従業員のミスで損害が出た場合はどうでしょうか。
一見,直接ミスを犯した人が悪いように見えますが,果たしてそうでしょうか。
 

例えば,引越荷物を傷つけたといっても,もしかしたら作業時間が少なくて急ぐように言われていたかも知れない。
事前に見積もった荷物の量と実際の荷物の量が違っていて,トラックへの積み込みに無理があったかも知れない。
あるいはスケジュールが過密で疲労が溜まっていたかも知れない。
 

そう考えると,たった1人の従業員の責任にしてしまっていいのでしょうか。
さっきの利益の場合と比べてみてどうでしょうか。
同じように多くの人の責任が重なり合っているのではないでしょうか。
 

このように考えると,よほどの事情でなければ一従業員にすべての責任を負わすのは不公平だと考えられます。
 

裁判所もこのような考え方を取っています。
裁判例では従業員個人の責任を認めなかった判決も多く,最高裁まで行った事案では,従業員の責任を4分の1だけ認めた判決(最高裁昭和51年7月8日判決)があります。
横領などの故意の場合を除くと従業員の責任を100%認めたものは耳にしたことがありません。
 

この引越社の事案では,もう1点,重要な問題があります。
従業員に賠償責任を負わせて給料から天引きしている点です。
こちらは労働基準法24条に違反すると思われます。
 

労働基準法24条は,「賃金全額払いの原則」を規定しています。給料は生活の基礎であるから確実に全額労働者に渡しなさいということです。
ですから,会社は社会保険料の控除や財形貯蓄など特別に認められたもの以外は給料から天引きしてはいけないのです。
最高裁も,給料と従業員に対する損害賠償請求権との相殺(天引き)を否定しています。
 

(ちなみに,給料の前借り金と相殺することは労働基準法17条で明確に禁止されています。)

大島小学校2分の1成人式

平成28年1月15日,猪名川町立大島小学校に「2分の1成人式」の講師として招待され,行ってきました。

 

大島小学校の4年生と楊津(ようしん)小学校の4年生の合同企画です。

子どもたちが将来の夢を描くための手助けとなるために様々な職業の人から仕事の話を聞くという内容です。

 

弁護士の仕事を説明することは難しかったのですが,イメージだけでもつかんでくれたかなと思います。

小学生に仕事で講演するのは初めてだったのですが,みんな元気がよく,反応がよく(ここ嬉しい!),楽しいひとときでした。

子どもたちが将来のことを考えるための一助になってくれれば幸いです。

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USJのチケット転売禁止

 

最近,USJが転売チケットを無効にする方針を打ち出した,というニュースがありました。

 

 

USJでは,特にアトラクションの待ち時間を短縮できる「エクスプレスパス」が買い占められて高額で売られていることが以前から問題となっていました。

USJはこのような買い占めや転売を排除することが目的であると説明しています。

 

 

そもそも,チケットの転売は違法なのでしょうか。

 

 

いわゆる「ダフ屋行為」は警察の取締の対象となっています。

ダフ屋行為が取締になる理由は,戦後の食糧難の時代に遡ります。

 

 

戦後の食糧難の時代,配給札を買い占めて高額で売る行為が行われていました。

このような行為が横行すると,金持ちはたくさん食べられるけど,貧乏な人は餓死してしまうことになります。

そこで,物価統制令でこのような行為を禁じていました。

 

 

その後,高度経済成長期になると,ダフ屋行為を禁止する理由が変わってきます。

例えば,人気のイベント会場などで,ダフ屋がチケット売り場のチケットを全部買い占めたらダフ屋は暴利をむさぼることができます。

また,ダフ屋にクレームを付ける人も多く,会場周辺が混乱したりしました。

 

 

このような暴利や混乱を防止するために,ダフ屋行為は各都道府県の迷惑防止条例によって規制されることになりました。

 

 

主に混乱の防止という理由による規制ですので,迷惑防止条例では,「公衆が出入りすることができる場所」でのチケットの転売などを禁止しています。

 

 

ですから,インターネットでの転売は迷惑防止条例違反には該当しないと言われています。

(コンビニで購入したチケットをネットオークションで販売した人が摘発されたケースがありますが,「コンビニ」は「公衆が出入りすることができる場所」といえるからでしょう。)

 

 

USJは,すべての転売行為を一律に禁止することにしたというのですから,元々法律に違反していない行為も含めて禁止したということになります。

なぜ,そのようなことができるかというと,それが契約内容となるからです。「契約条件を守れる人だけが契約してください(利用してください)」ということです。

 

 

また,USJでは,チケット転売の撲滅を目指すとともに,被害に遭った人(無効となるチケットを買わされた人)の支援もすると言っているようです。

具体的には,集団訴訟や刑事訴追の支援をしたいと述べています。

 

 

法律で禁止されていないのに刑事訴追ができるのでしょうか。

結論は「できます」

 

 

その理由はこういうことです。

USJが「転売チケットは無効とする」と宣言しました。

すると,チケットを転売する行為は「使えないチケットを売る」行為になります。

つまり,詐欺罪に該当し,警察が捜査することが可能となるのです。

 


未成年者へのタバコ販売

 

最近,未成年者(当時15歳)へのタバコを販売した店員に高松高裁が逆転無罪判決を下したというニュースがありました。

 

 

多くのコンビニでタッチパネルで「20歳以上」のボタンを押すことによって自己申告をさせています。

今回の事件も,未成年者がパネルを押して購入しています。

 

 

一審では,有罪判決でした(罰金10万円)。

 

 

未成年者へのタバコの販売は「未成年者喫煙禁止法」で禁止されています。

年齢確認は平成13年の改正によって義務づけられました。

 

 

一審判決と控訴審判決ではどのような違いがあるのでしょうか。

法律的には,「故意」が問題となります。

 

 

未成年者喫煙禁止法では,「未成年者」に「タバコ」を売る行為を禁止しています。

この犯罪が成立するためには,自分が売る相手が「未成年者であること」と自分が売るものが「タバコ」であることを知っている必要があります。

 

 

「タバコ」については問題ないでしょう。問題は「未成年者」であることを知っていたか,です。

 

 

一審判決は,「少年は頬にニキビがあるあどけない顔で,一見して未成年とわかる顔立ちだった」と言っています。

これに対し,控訴審は,「少年が1m67cmという身長や服装,そして,店員が少年を見た時間が短時間であったことなどから,店員が未成年者だとわかったと断定することはできないと言っています。

 

 

非常に難しい問題です。

判決文を読んでいないので,詳しいことはわかりませんが,大人びた未成年もいるし,「あどけない顔立ち」の大人もいますから,「あどけない顔立ち」だけで20歳以上だとわかるかというと難しいのではないでしょうか。

 

 

ところで,未成年者喫煙禁止法はタバコを吸った未成年者もタバコを買った未成年者も罰則がありません。

法律は未成年者を守ることが目的であるからと説明されています。

 

 

しかし,騙して買った方はお咎め無しで,騙されて売った方が処罰されるということに疑問の声も出ているようです。

理屈だけを言えば店員を騙してタバコを手に入れたということで詐欺罪(刑法246条)に該当するのでしょうけれど,やはり,未成年者喫煙禁止法の目的・趣旨からすれば,この場合に詐欺罪を適用することはないでしょうね。

 


宝塚北高等学校での講演

平成27年10月22日、弁護士会の仕事で兵庫県立宝塚北高等学校の「仕事を知ろう・社会を知ろう」の講師として話をしてきました。

宝塚北高校で講演をするのは2回目です。


対象は1年生で、もうすぐ文理選択する時期の生徒です。

いろんな職業の人に来てもらい(20業種)、話をしてもらって、進路選択の参考にするという趣旨の企画です。

生徒たちは10〜20名程度のグループに分かれて興味のある職業人の話を聞きます。


講演内容は学校側よりリクエストがあり、①現在の仕事を選んだ理由②仕事内容、その職業に必要な資質③仕事をする中での喜び、悩み、苦しみ④高校時代にしておくべきことの4点です。


自分なりに一生懸命話しましたが、生徒たちの反応が薄いので、十分に伝わったかはよく分かりません。

でも、みんな真っ直ぐ僕のほうを見てくれていましたから、しっかり聞いてくれたと思います。

少しでも進路選択の参考になれば幸いです。

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私立高校の入試について

 

先日,私立高校の入試で,学力試験の前に大半の合格者が内定しており,しかも,内定者より79点も高い点数を取ったのに不合格とされた受験生がいたというニュースがありました。

 

 

学校の対応にはかなり批判が多いようですが,法律的にみるとどうなのでしょうか。

 

 

私立高校に関連する法律と言えば,教育基本法,私立学校法,学校教育法などがあります。

 

 

入試に関しては,学校教育法施行規則59条1項で,「高等学校の入学は,・・・調査書その他必要な書類,選抜のための学力検査の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて,校長が,これを許可する。」(一部略)と決められています。

 

 

「調査書」というのはいわゆる内申書です。

 

 

つまり,内申書や学力試験やその他を総合して決めることになっています。

 

 

総合して決めるわけなので,内申書や面接を重視して学力試験を軽視しても法律的には違法とは言えないでしょう。

 

 

特に,私立学校の場合,教育基本法8条で,「自主性を尊重」すべきことになっています。

 

 

ですから,公平性が重視される公立学校よりも柔軟な入試が許されると考えられます。

 

 

ただし,今回の報道のケースでは,学力試験の前に合格が内定しており,内定者は全員学力試験を受けて全員合格しているとのことです。

 

 

このような報道内容からしますと,学力試験の結果にかかわらず合格させると決めていたと受け取られても仕方ありません。

 

 

その意味では,学力試験と内申書と面接によって総合的に決めるかのような募集案内には問題があったと言えるでしょう。

 

 


インターアクト地区年次大会

平成27年8月23日〜24日の2日間、ロータリークラブの関係でインターアクト地区年次大会に参加してきました。



私の所属する宝塚ロータリークラブは、雲雀丘学園インターアクトクラブを支援しています。


インターアクトクラブとは、ロータリークラブにより提唱された、12歳から18歳までの青少年または高校生のための社会奉仕クラブです。


インターアクトクラブでは、毎年、地区ごとに(おおむね都道府県ごと)年次大会を開催し、クラブ間の交流を図るとともに、生徒たちのリーダーシップを高めるためのプログラムが実施されます。


今年度は「セーブネイチャー」というテーマで、特定外来生物について勉強したのち、環境保全実践活動を行いました。


私たちロータリークラブのメンバーも生徒たちと一緒に学習し、実践活動にも参加しました。


2日目は、残念ながらロータリークラブの例会日だったので、朝早くに出発したので、2日目のオリエンテーリングには参加できませんでした。


年次大会に参加するのは今回で2回目でしたが、前回同様、生徒たちの学ぼうとする積極的な姿勢に感動しました。


こういう活動に積極的に参加する生徒たちがこれからの日本を担っていってくれるのではないでしょうか。
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東京オリンピックのエンブレム

 

先日,東京オリンピックのエンブレムのデザインがベルギーの劇場のロゴに似ているということが話題になりました。

 

 

法律的には商標権と著作権が問題になります。

 

 

まず,商標権ですが,商標権というのは登録された商標に発生するものです。ですから,ベルギーのデザイン事務所がロゴを商標登録していなければ商標権侵害にはなりません。

 

 

仮に登録していた場合,商標権の侵害の有無は,他の商品やサービスと混同されるおそれがあるか否かで決まります。具体的には,見た目(外観),呼び名(称呼),イメージ(観念)のいずれか一つ以上が同一か酷似していて,同じ所から出ていると誤解されるかどうかで判断されます。

 

 

今回のエンブレムは,見た目は確かに似ていますが酷似しているとは言えないでしょう。また,呼び方が特にあるわけでもありません。しかも,一方は劇場で一方はオリンピックです。ベルギーの劇場がオリンピックを主催していると誤解する人はいないでしょう。

 

 

本件で問題となるのは著作権です。著作権の場合,何かに登録しなくても作っただけで権利が発生しています。

 

 

今回のケースは,著作権のうちの「翻案権」が問題となります(著作権法27条)。

 

 

「翻案」とは,例えば,小説を映画化する,映画をミュージカルにする,みたいに,もとの作品に修正を加えて新しい作品を作ることです。

 

 

この場合,小説を書いた人と映画化した人が同一だと誤解されることは普通ありません。しかし,通常,無断で小説を映画化すれば著作権侵害になります。

 

 

著作権の侵害にならないためには,著作権者の承諾を得るか,修正が「翻案」に該当しないことが必要です。

 

 

判例によると,「翻案」とは,他の作品に依拠していて本質的な特徴の同一性を維持しながら別の作品を作ることとされています(最判平13.6.28)。

 

 

「依拠」というのは,元の作品から影響を受けているということです。「本質的な特徴の同一性を維持」しているかどうかは,最終的に裁判所の判断となります。

 

 

もし,日本のデザイナーがベルギーの劇場のロゴにヒントを得てエンブレムを作ったのであれば,著作権侵害の可能性が出てくるでしょう。

 

 


親の不法行為責任

 

今回は,親の不法行為責任についてです。

 

 

少し前のことになりますが,子供が蹴ったサッカーボールを避けようとしてバイクを運転していた人が転倒して,その後死亡したという事件で親の責任を否定する最高裁判決が出ました。

 

 

当時,小学校6年生だった子供が放課後,フリーキックの練習をしていたところ,蹴ったサッカーボールが校庭から外の道路に転がったということです。

 

 

一審及び二審は親の監督責任を認めていました。

 

 

この最高裁判決の話をするためには,「不法行為責任とは何か」「親の監督責任とは何か」から話す必要があります。

 

 

不法行為責任とは,簡単にいうと,「悪いことをして誰かに損害を与えたら賠償責任を負う」ということです。

 

 

現在,不法行為責任に関しては,世界各国で,「過失責任主義」がとられています。これは,生じた結果に対して「故意」や「過失」がなければ責任を負わない,という原則です。「過失」とは簡単に言うと不注意のことです。

 

 

もともと,古代ローマの時代には「結果責任主義」といって,起こった結果については原因を作った人がすべて責任を負うとされていました。

 

 

これが一方で,哲学の分野では,「人間は意思によって行動する」とか「自我」の概念などが発展していき,「意思」に基づく行動でなければ責任を負わすことはできないという考え方が出てきました。

 

 

他方では,経済の分野で,「結果責任主義」では恐ろしくて大きな経済活動ができない,人並みの注意をしておけば責任を負わされない,とすることで活発に活動ができるようにする必要がある,という風に変わっていったわけです。

 

 

このようにして,現在では「過失責任主義」が原則であり,そのこととの関係で「自分の行動の結果,どういう責任が発生するか」を理解できないものに責任を負わすことはできない,という「責任能力」がなければ責任は負わない,との考え方が出てきました。

 

 

そして,現在の日本の法律の解釈として,未成年者の責任能力は,「行為の結果,どのような責任が発生するのかを理解できる能力」といわれています。

 

 

今回の事件では,ボールを蹴った子供は当時小学校6年生で「責任能力がない」とされました。

 

 

子供に責任能力がない場合,法律では原則として親が責任を負うことになっています(民法7141項)。

例外として,親が監督義務を怠らなかったときは責任を負わない,となっています。

今回は,この例外にあたるかが問題になりました。

 

 

そもそも親が責任を負うという考え方は,家長が家族の行動に責任を負う,という団体主義の考え方が今でも残っているからです。一方で,監督責任を怠らなければ責任を負わない,というのは「過失責任主義」の考え方です。

つまり,団体主義と個人主義の両方を調和させているのです。

 

 

今回は,親が監督義務を果たしていたのかが問題になりました。

法律の世界では,「例外」は簡単に認められません。そのため,これまではほとんどの事例で親の責任が認められてきました。

 

 

これに対して,今回は親の責任を否定したので大きく取り上げられました。

 

 

報道だけでは事実関係の詳細は分かりませんが,報道によると,判決では「日常的な校庭の使用方法で,通常は人に危害を与えるものではなかった」と述べられているようです。

 

 

「通常のしつけで防止できる事故ではなかった」と判断したということです。

 

少年法について

 

今回は,少年法についてです。

 


少年による殺人事件などが起きると,必ず少年法を見直すべきだという議論が起こります。

 


多くの場合,「少年法はけしからん。」という声を聞きます。

しかし,そういう人と話しをしてみると,実は少年法をよくご存じでない場合がほとんどです。

 


例えば,少年は少年院に入ることはあっても刑務所には入らないと思っている方がおられます。また,少年は死刑にならないと思っている方もおられます。しかし,これらは誤解です。

 


まず,少年法の沿革ですが,日本の少年法はアメリカ法を参考にして作られました。

 


アメリカでは,少年の犯罪は貧困や人種差別が背景にあるという理解が広まり,成人と異なる体系を作りました。

貧困などの環境のため犯罪に走った少年に対して,大人と同じように劣悪な環境の刑務所に送るのではなく,教育を与えて矯正させようとしたのです。

 


日本の現行の少年法では,犯罪を犯した少年については,原則として家庭裁判所で審理することとなっています。これはアメリカの少年裁判所を参考にしたものです。

 


ただ単に罪の重さを審理するだけではなく,少年が育ってきた環境などを専門家が調査をして,その少年にふさわしい教育とは何かを考えるのです。

 


家庭裁判所で審理された結果,保護観察や少年院送致などの処分になることがあります。これらは比較的知られています。

 


しかし,すべてがそうではありません。通常の刑事手続によって裁判が行われて刑務所に行くことも死刑になることもあります。

 


少年法では,犯行時に18歳未満であれば死刑を科すことができないとされています(511項)。逆に言うと,犯罪時に18歳や19歳であれば死刑を科すことができるのです。

 


実際に,古い話では「長山則夫事件」,最近では「光市母子殺害事件」などで犯行時少年だった人に死刑判決が確定しています。

 


また,14歳以上であれば無期懲役を科することもできます(512項)。

 


大きな事件が起きると,「少年法を改正するべきだ。厳罰化するべきだ。」という声が出ますが,現行の少年法でも,死刑や無期懲役に処することはできるのです。

 


そうはいっても,「やはり軽すぎる」という方もおられるでしょう。

 


この問題は難しすぎて,私がコメントできるようなものではありませんが,参考までにアメリカの少年法厳罰化の話を紹介しておきます。

 


1970年代後半から,アメリカの各州で少年法の厳罰化が進められましたが,1980年代,90年代と少年犯罪は人口比で大幅に増大しています。

 


この結果を見ると,厳罰化だけでは解決できない難しい問題であることが分かるのではないでしょうか。

 


風力発電視察

平成27年6月12日〜13日,高知県大月町にある大月ウインドファーム(風力発電施設)の視察に行ってきました。


近畿弁護士会連合会公害環境委員会の夏期研修会の準備のための視察です。


高知空港から車で3時間,大月ウインドファームに着きました。

大月ウインドファームは株式会社大月ウインドパワーが所有する風力発電施設です。


1機1000KWの風力発電機を山の尾根伝いに12機並べています。

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証人尋問その3

 

今回は,証人尋問その3です。

 

証人尋問では,禁止されている質問の仕方があります。

 

一つは誘導尋問です。誘導尋問というのは,「あなたが見たとき信号は青だったのですね」「はい」「その車は減速することなく交差点に進入したのですね」「はい」「もう一方の車は,衝突を避けようとしてハンドルを切ったのですね」「はい」というように,証人に答えさせたい内容を先に示す尋問手法です。

 

このような尋問を行ってしまうと,「証人の記憶をチェックする」という証人尋問の役割を果たすことができません。証人は質問者の誘導に乗っかっているだけだからです。

 

そのため,質問としては,「あなたはその時信号を見ましたか」「はい」「信号の色は覚えておりますか」「はい。青色でした」「その車はどのように走行していましたか」「特に減速することなく交差点に進入しました」「もう一方の車はどのように走行していましたか」「衝突を避けようとしてハンドルを切りました」というふうに聞かなければなりません。

 

ただし,誘導尋問が許される場合もあります。例えば,反対尋問の場合です。

 

反対尋問は,前回の「証人尋問その2」でお話ししたように,証言に対してさまざまな角度から揺さぶりをかけて信用性をチェックする機能を有しています。

 

そのため,反対尋問では,「あなたは車の動きをよくご覧になっていたとのことですが,そうだとすると,信号の色まで確認している余裕はなかったのではないですか」とか,「『ハンドルを切った』とおっしゃいましたが,車の動きを見てそう判断しただけであって,実際に運転手がハンドルを切る動作を見たわけではありませんね」などの誘導尋問が許されます。

 

このように証人尋問にはいろいろなルールが存在するのです。

 


証人尋問その2

 

今回は,証人尋問その2です。

証人尋問において,証人は基本的に書類などを見て証言することはできません。

証人の記憶をチェックすることが最大の目的だからです。

 

 

このように言うと,「言うべきことを丸暗記すればよいのか」と思われがちですが,そうではありません。

 

 

仮に完璧に丸暗記をしたとしても,尋問には「反対尋問」があります。

反対尋問では,さまざまな角度から揺さぶりをかけます。

すべての質問を予想することは不可能なので,予想外の質問が出たときにしかるべき回答が出てこなければ,さっきまでの「完璧な」回答がかえって不自然に感じられます。

 

 

このような「不自然さ」を裁判官は見逃しません。一挙に形勢逆転ということにもなりかねません。

このように,反対尋問のチェックを受けることにより,虚偽の証言や誇張された証言の信用性を減殺することができる仕組みになっているのです。

中山寺星祭節分会

平成27年2月3日、中山寺の星祭節分会・豆まき式に福男として参加してきました。


中山寺の星祭節分式は伝統ある行事で、中山寺のホームページによると、


「古くから伝わる追儺式(ついなしき−1年の厄を払いその年の幸せを願う儀式)を宝塚歌劇団生扮する観音様に、貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)3匹の鬼が諭(さと)されて、福・禄・寿の善神に変わるさまを現代風にアレンジした音楽法要を執行します。
豆まき式は、宝塚歌劇団生を福娘・関西の各界でご活躍されている方々を福男とし、行います。例年約 12,000人の参詣者があります。」


とされています。


初めての参加でしたので少し緊張しましたが、厳粛な儀式に感動したとともに、間近で歌劇団生を見ることもできて良かったです。


この行事に参加すると穢れが落ちると言われています。


昨年の穢れが落ちて無病息災で一年が過ごせますように。

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証人尋問について


「証人尋問」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?

よくテレビなどでやっていますよね。証人が法廷の中の証言台の前に立って(実際は座ります),横から弁護士が質問をして,前から裁判官が睨んでいるあれです。

 

 

証人尋問には幾つかのルールがあります。基本的なルールは「交互尋問」といって,味方の弁護士がひととおり質問をしてから,次に相手側の弁護士が質問をします。最後に裁判官が質問します。

証人は質問に答えるのが任務であり,質問者に対して逆質問をしたり,聞かれてもいないのに裁判官に対して自分の意見を訴えかけてはいけません。

 

 

この基本的なルールを理解していない方が多く(仕方のないことですが),「裁判官の前で言いたいことを言わせて欲しい。」という方が時々おられます。

 

 

しかし,証人尋問は「言いたいことを言う」場ではなく,「聞きたいことを聞く」場なのです。

こう言ってしまうと,何か裁判というのは冷たいもののように感じるかもしれません。

 

 

しかし,「聞きたいことを聞く」ことは,裁判官が真実を発見するためにとても重要な手続なのです。

 

 

裁判は法律のルールに則って「事実」を認定します。そのためには,ルールに適応した形で一つずつ小さい「事実」を引き出していく必要があります。裁判官は引き出した「事実」を積み重ねて,目標とする「事実」を認定します。

弁護士も裁判官もそのために必要な質問をするのです。

 

 

ですから,もし裁判の証人になった場合は,面倒くさがらずに,一つ一つの質問に丁寧に答えてあげて下さい。

製造物責任について

製造物責任というのをご存じでしょうか?

製造物責任は「製造物責任法」という法律で規定されているものですが,この法律は通常の法律と異なる特徴的な部分が幾つかあります。


 

従来の法体系では,購入した商品に欠陥があって,そのために怪我をしたような場合,民法の不法行為責任(民法709条)や契約責任(債務不履行責任,民法415条)を追及する必要がありました。

 

 

しかし,これらはいずれも消費者が製品の欠陥により生じた被害を追及するには不十分でした。

 

 

例えば,不法行為責任の場合,メーカーに「過失」があったことを立証しなければなりません。「過失」というのは,簡単にいうと,メーカーとして通常要求される注意を怠ったことです。

 

 

ですから,仮に商品に問題があったとしても,メーカーとして通常の注意を払っていたが予測できなかったような場合には責任を追及できないということになります。

 

 

また,契約責任の場合,消費者は契約した相手にしか責任を追及できません。つまり消費者は販売業者に責任を追及することになります。

 

 

契約責任の場合も先ほど述べた「過失」と同様のもの(帰責事由)が必要となるのですが,販売業者の過失を証明するのはメーカー以上に困難です。

なぜなら,販売業者は自分で設計したり製造しているわけではないので,製品の不具合などを見抜くことは困難だからです。

 

 

このように従来の法体系では消費者被害の手当として不十分な点がありました。

そこで,制定されたのが「製造物責任法」です。

 

 

この法律では,製品に「欠陥」があった場合,その「欠陥」によって怪我をした場合などにメーカーに対して損害賠償を求めることができることになっています。

 

 

つまり,製造物責任の特徴の一つは,「欠陥」の存在を証明すれば「過失」の存在を証明する必要がないことです。

 

 

「欠陥」と「過失」はどう違うのかというと,少し分かりにくいのですが,欠陥とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」とされています(製造物責任法22)

 

 

先ほど述べたように,「過失」とは通常の注意を怠ったことですので,それを立証するためには,製造工程全体を確認して,どこで注意を怠ったのか(どの過程に間違いがあったのか)を突き止めなければなりません。

 

 

これに対して,「欠陥」の場合は,商品そのものを専門家などに調査してもらうことで,通常必要な強度が不足していることなどが判明することがあり,「過失」を立証するより容易です。

 

 

また,製造物責任法によると,製造業者だけではなく,輸入業者に対しても責任を追及することができます。

 

 

輸入品の場合に海外のメーカーに責任追及をしなければならないとなると,消費者の負担が大きいため,輸入業者に対しても責任追及ができることにしたのです。

この点も製造物責任法の特徴の一つです。