遺言Q&A


Q  父親が亡くなりました。遺言があるのですが、勝手に開けてもいいのでしょうか?

 

A  いいえ。勝手に開けてはいけません。「検認手続」といって家庭裁判所で開封する手続が必要です(但し、公正証書遺言は別)。

 

 

Q 遺言の内容と異なる遺産分割は可能ですか?

 

A 遺言があっても遺言執行者がいない場合には,相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意があれば,遺言と異なる遺産分割をすることが可能です(熊本地裁昭和30年1月11日判決等)。 

遺言執行者がある場合,遺言執行者及び相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意がある場合に,遺言と異なる遺産分割を有効とした裁判例があります(東京地裁昭和63年5月31日判決)。

 

 

Q 私には相続人として妻と子ども3人がいます。遺言書に「私の財産は全て妻である○○に相続させる。但し,妻が死亡した後,妻が私から相続した財産は長男の○○がすべて相続するものとする。」と書いた場合,このような遺言は有効なのでしょうか。

 

A このような遺言は「後継ぎ遺言」と言われますが,一般的には無効だと考えられています。

なぜなら,遺言で財産を取得した人は,その取得した財産を自由に処分できることになるので,その方が亡くなった後のことについてまで決めることはできないからです。

 

 

Q 公正証書で遺言書を作成したいと考えているのですが、体が悪く、公証役場まで行くことができません。委任状を作成して代理人に行ってもらうことは可能でしょうか。

 

A いいえ。それはできません。遺言公正証書は代理人に委任することができず、必ず遺言者が公証人の面前で遺言内容を話さなければなりません。お体が悪くて公証役場まで赴けない場合には公証人が出張してくれるサービスがあります。

 

 

Q 先日、父親が亡くなりました。しかし、私と父親は不仲であり、父とは長年会うことも話すこともありませんでした。父がどこでどのような生活をしていたかもよく分かりません。父には一定の資産があり、もしかしたら、遺言公正証書を作成しているかも知れません。父が遺言公正証書を作成しているかどうかを知る方法はないでしょうか?

 

A 平成元年以降に作成された遺言公正証書であれば、全国のどこの公証役場で作成された場合でも、お近くの公証役場で調べることが可能です。遺言公正証書が存在する場合には、写しを入手することも可能です。ただし、遺言者の生前に調査することはできません。

 

 

Q 父が亡くなり、父の遺言書が見つかりました。遺言書の中に、相続人ではない父の知人に対して特定の不動産を「相続させる」という記載がありました。相続人ではない人に相続させることはできないので、この部分は無効と考えてもよいのでしょうか?

 

A いいえ、無効ではありません。確かに、法律的には相続人でない人に「相続させる」ことはできませんが、このような場合、遺言者の遺志としては、その知人の方に「遺贈」することを望んでいると考えられます。したがって、このような場合、実務では「遺贈」と扱い、登記原因を「遺贈」として所有権移転登記を行うことになっています。

 

 

Q 先日、父が亡くなりました。法定相続人は母と姉(長女)と私(二女)の3人です。父の書いた遺言書が見つかったのですが、そこには、「全ての財産を長女に任せる」と記載されていました。この内容の場合、全ての遺産は姉のものになるのでしょうか?

 

A 「任せる」という文言の記載のある遺言書の場合、解釈が難しく、裁判例でも解釈が分かれています。「任せる」の意味が「全ての遺産を与える」という意味であるという解釈と「遺産分割などの手続を中心になって行ってほしい」という意味であるという解釈が成り立ちます。前者の意味に解釈した裁判例としては、大阪高裁平成25年9月5日判決があり、後者の意味に解釈した裁判例として、東京高裁昭和61年6月18日判決があります。

このように、「任せる」との記載は解釈が難しく、将来に紛争を招く可能性があります。これから遺言書を作成される場合は、「任せる」との表現を用いないほうがよいでしょう。

 

 

Q 先日、父方の祖父が亡くなりました。祖父の配偶者である祖母は既に亡くなっており、私の父も3年前に亡くなっています。祖父には元々子供が2人おり、1人は亡くなった私の父(長男)で、もう1人は二男(私から見て叔父)です。二男(叔父)は健在です。祖父の遺産としては実家の土地建物を含めて複数の不動産と預貯金等があります。祖父の遺言書が見つかり、「実家の土地建物を長男に相続させる」との記載がありました。この場合、長男(父)は祖父よりも先に死亡しているので、代襲相続になり私が祖父の実家の土地建物を相続することになるのでしょうか?

 

A いいえ、そうではありません。最高裁平成23年2月22日判決では同様のケースで代襲相続を否定しており、当該記載部分は効力を生じないと述べています。

 

 

Q 民法改正で自筆証書遺言制度が改正されたと聞きましたが,どのような改正ですか?

 

A まず,以前は,自筆証書遺言は,文字どおり自筆(手書き)する必要があったのですが,本文だけでなく,日付も署名も財産目録も全て自筆する必要がありました(旧民法968条1項)。

特に財産の多い方にとっては財産目録を手書きするのはかなり大変なことでした。

 改正後は,財産目録の部分については自筆しなくてもよくなりました。例えばパソコンなどで作成してもOKです(民法968条2項)。
ただし,パソコンなどで作成した財産目録には全てのページに自署と押印が必要です。

 次に,自筆証書遺言についての保管制度ができました。

 これまでは特に保管制度はなく,自筆証書遺言については,自宅で保管したり知人に預けたりしていました。

 改正法では,法務局において遺言書を保管する制度が創設されました。この部分は民法ではなく,「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下,「遺言書保管法」といいます。)という別の法律で定めました。

 遺言書保管法によると,遺言者は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対して,遺言の保管申請を行うことができます(遺言書保管法4条3項)。

 さらに,遺言書保管法の手続によって保管された自筆証書遺言については,検認手続をする必要がなくなりました(遺言書保管法11条)。