「財産を全て任せる」との遺言の解釈

「財産を全て任せる」との文言は、それだけでは財産を全て遺贈する趣旨なのか、遺産に関する手続を全て依頼する趣旨なのか不明です。

 

遺言の解釈をどのように行うべきかについて、最高裁の判例では「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものである」と述べられています(最高裁昭和58年3月18日判決)。

 

よって、「財産を全て任せる」との遺言の場合、被相続人と各相続人との交際状況、被相続人と受遺者との関係等を考慮した上で、被相続人が受遺者に全財産を遺贈し、他の相続人に一切財産を相続させないという意思が肯定できるような具体的事情があるかどうかを検討して、被相続人の真意を探究していくことになります。

 

下級審の裁判例では、「財産を全て任せる」との趣旨の記載のある遺言について、遺贈を否定した裁判例(東京高裁昭和61年6月18日判決)と遺贈を肯定した裁判例(大阪高裁平成25年9月5日判決)に分かれています。