バールのようなもの

事件報道で「バールのようなもの」という表現を聞くことがあります。

 

 

どうして、「バール」と言わずに「バールのようなもの」と言うのでしょうか。

おそらく2つの意味があると思います。

 

 

まず、1つは、例えば自動販売機がこじ開けられて金銭が盗まれた事件で、何かでこじ開けた形跡はあるが、その道具が犯行現場に残っていない場合があります。

 

 

そういう場合、バールを使った可能性は高いのですが、犯行現場に残っていない以上、「バール」とは断言できないのです。

 

 

「普通バールでしょう」と言いたくなりますが、バールに似ているがバールでないものもあります。

 

 

バールは西洋から入ってきた工具ですが、日本に古来よりある工具で「カジヤ」という工具があります。「釘抜き」ともいいます。

ですから、確実にバールとは限らないので、「バール」と断定してしまうと正確な報道とはいえないのです。

 

 

もう1つの意味は、例えば殺人事件などで、凶器が現場に残っていても、「バールのようなもので殴られた」とか、「鈍器のようなもので殴られた」と表現する場合があります。

 

 

これには「秘密の暴露」が関係しています。

 

 

「秘密の暴露」というのは、事件の容疑者が自白をする際に、「捜査機関と犯人以外知りえない内容」を容疑者が話すことです。

 

 

例えば、殺人事件が発生して、犯行現場に血の付いたカナヅチが残っていたとします。でも、報道ではカナヅチと言わず、「バールのようなもので殴られた傷がある」と言っておきます。

 

 

その後、容疑者が浮かび上がって逮捕されて「自分が殺しました。」と自白すると、警察官は「じゃあ、どうやって殺したのか」と聞きます。

そのときに、容疑者が「カナヅチで殴りました」と答えると、カナヅチで殴られたことは報道発表されていないので犯人でなければ知らないはずです。

これが「秘密の暴露」です。

 

 

このような「秘密の暴露」があると自白の信憑性が高まりますので、有罪の証明に役立つというわけです。

 

 

「鈍器のようなもの」「ひものようなもの」という言い方も同じように使われています。