弁護士を付けずに裁判はできるか?

弁護士を付けずに裁判はできるのでしょうか。

まず、日本の裁判は大きく分けて刑事裁判と民事裁判があります。

 

 

まず、刑事裁判の場合、公開の法廷で行われる正式裁判においては、一定の案件では必ず弁護人(刑事裁判で被告人を弁護する弁護士のことを「弁護人」といいます。)を付けなければならないことになっています。これを「必要的弁護事件」といいます(刑事訴訟法289条等)。

 

 

一定の案件と書きましたが、実はほとんどの案件が該当します。

殺人、強盗、窃盗、詐欺、恐喝、覚醒剤、強制わいせつ、傷害等は全て必要的弁護事件です。

 

 

弁護人を付けないで裁判できる案件はかなり少なく、一般に知られている罪名としては、無免許運転、酒気帯び運転、暴行罪くらいです。

 

 

では、これらの案件で弁護人を付けずに裁判をしているかというと、そうではありません。

 

 

弁護人を付けたいけど弁護士費用を出せない人は国選弁護人を請求することができます(付けなくてもいいというだけで、付けたい人は被告人の権利として付けることができます。)。

 

 

また。本人が「弁護士を付けなくていい」と言い張っても、たいていは、裁判官が職権で弁護人を付けます(刑事訴訟法37条)。

 

 

なぜかというと、もちろん被告人の人権を守るという意味もあるのですが、弁護人が付いていないと裁判のルールをいちいち説明するのが大変なんです。

 

 

その結果、刑事事件のうち正式裁判では99%弁護人が付いています。

 

 

次に、民事裁判の場合、日本では、どんな裁判でも弁護士を付けずに裁判できます。

 

 

これに対して、ドイツ、オーストリア、フランスでは、必ず弁護士を付けないといけないという決まりになっています(弁護士強制主義といいます。)。

 

 

弁護士を付けずに自分で裁判をすることを一般に「本人訴訟」といいます。

実は、日本では、本人訴訟の割合が結構高いのです(地裁で50%程度、簡裁で90%程度)。

 

 

本人訴訟の場合、当事者尋問がどうなるのかに気になりますね。

当事者尋問というのは、テレビドラマでよく見るように、裁判の当事者が法廷の証言台の前で弁護士から質問を受けてそれに答えるというものです。

 

 

当事者尋問には、主尋問と反対尋問があります。

双方が弁護士を立てるケースでは、主尋問では、自分が依頼した弁護士が自分に対して質問をします。反対尋問では、相手が依頼した弁護士が自分に質問をします。

 

本人訴訟の場合、自分に対する主尋問は誰がするのでしょうか。

自分で自分に対して質問して自分で答えるのは想像しただけでも滑稽ですね。

 

 

答えは、裁判官です。

具体的には、どういう質問をするかを自分で考えて「尋問事項書」という書面を作成して事前に裁判所に提出しておき、それを裁判官が読み上げて、それに対して回答します。