交通事故Q&A


Q  保険会社から提案書が送られてきました。納得できなくても、保険のプロが提示している数字なので、サインするしかないのですか?

 

A  納得していないのであればサインする必要はありません。あなたの方から納得のいく金額を保険会社に提示してみてください。

 保険会社との間で折り合いがつかない場合は、弁護士に依頼すれば、効果的な解決が可能な場合があります。

 

 

Q 交通事故に遭い、外科に通院していたのですが、外科のお医者さんからは「必要な治療は終わったのでもう来なくていいですよ。」と言われました。しかし、なんとなく肩が凝るので自分の判断でマッサージに行きたいのですが、加害者にマッサージ代を請求することはできるのでしょうか?

 

A 治療費・入院費については、「必要かつ相当な実費」を請求することができます。何が必要かつ相当かというのは難しい問題ですが、一般的には,医師が必要と判断した治療は「必要かつ相当」といえる場合が多いでしょう。

整骨院・接骨院などの施術費は,医師の指示による場合には認められる傾向にあります。

医師の指示がない場合であっても,症状に対して有効かつ相当と認定されれば認められる場合がありますが,簡単には認められないので注意が必要です。

 

 

 Q  保険会社から、「そろそろ症状固定だと思うので、示談交渉をしましょう。」と言われました。どうしたらいいのでしょうか。

 

A  お医者さんが、まだ治療が必要だと言うのであれば治療を続けるべきです。ただし、保険会社が治療費を支払わなくなる可能性があります。

 治療を続けながらも、法律的関係としては後遺障害の認定をもらい、しかるべき賠償を受け取るのも一つの方法です。

 

 

Q 交通事故による入通院にかかった交通費はどの程度加害者に請求できるのですか?

 

A 基本的に,入退院・通院にかかった実費を請求できます。

ただし,タクシー代は,障害の程度や交通の便からみて相当性がない場合(タクシーでなくても通院できる場合)には請求できません。この場合,公共交通機関を利用した場合の料金を請求できます。

また、自家用車での通院の場合はガソリン代を請求できます。ガソリン代の計算方法は、一般的には1kmあたり15円というのが相場です。

 

 

Q  交通事故に遭ってケガをした場合、慰謝料をもらえると聞いたのですが、幾らくらいもらえるのですか?

 

A  慰謝料には、死亡慰謝料、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺症慰謝料などがあります。金額については、保険会社基準と裁判基準というものがあります。

 保険会社基準というのは、保険会社が会社の内部で定めている基準です。裁判基準というのは、裁判(訴訟)を起こした場合に、裁判所が判決で言い渡すときの基準です。保険会社基準よりも裁判基準の方が額が高く、弁護士に依頼すれば、弁護士は裁判基準で交渉します。

 具体的には、死亡慰謝料の場合、裁判基準だと、一家の支柱の方が亡くなった場合には2800万円、その他の方の場合には2000万円~2500万円程度です(あくまで基準ですので、事情により増減します)。

 入通院慰謝料は入院期間と通院期間から算定します。後遺症慰謝料は、後遺症の程度により異なります。後遺症の認定は、労働者災害補償保険法施行規則別表第1「障害者等級」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken03/index.html)を踏襲した基準で判定されます。裁判基準の場合、慰謝料だけで、1級で2800万円、14級で110万円です。

 

 

Q  被害者の遺族ですが、損害賠償を請求することはできますか?

 

A  はい。遺族でも損害賠償を請求できます。請求の内容は治療費、葬儀費用、死亡慰謝料、逸失利益等です。

 

 

Q  逸失利益とは何のことですか?

 

A  事故によって得られなくなる利益のことです。怪我の内容や事故以前の収入額などによって違ってきます。

 具体的には、基礎収入を算定し、労働能力の喪失割合を乗じて(事故により何%程度労働能力が低下したか)、労働能力が喪失している期間を乗じます(ただし、労働能力喪失期間については、「ライプニッツ係数」という少しややこしい係数を乗じることになります)。

 労働能力喪失割合は後遺障害等級によって異なります。労働能力喪失期間は、一般的には、67歳まで働けると仮定して算出します。もっとも、むち打ち症などの場合は、長期間続かないものとして算定します。 

 

 

Q  追突されてむち打ち症になりました。レントゲンやMRI画像では特に異常が無いとのことなので、後遺障害は認定されないのでしょうか?

 

A  認定される可能性があります。むち打ち症などの場合、一般に、後遺障害等級は12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」か14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。実務では、12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」をいい、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」をいうとの考え方が取られています。

 したがって、MRI画像などで障害が医学的に証明されない場合であっても、医学的に説明可能な場合であれば、14級が認定されることになります。

 

 

Q 交通事故の休業損害の計算方法を教えてください。

 

A 休業によって収入が減少した額が明確な場合はその額が休業損害の額となります。

収入の減少額が明確に分からない場合は,「基礎収入」に「休業期間」をかけて算定します。

「基礎収入」は,一般的には次のように決めます。

ア 給与所得者の場合→事故直前3か月の平均収入

イ 事業所得者の場合→事故直前の申告所得額

ウ 家事従事者(主婦)の場合→女性の平均賃金

 

 

Q  主婦でも休業損害をもらえますか?

 

A  もらえます。家事にも金銭的価値があると考えて家事従事者が休養した場合にも休業損害が認められます(最高裁昭和50年7月8日判決)。

 したがって、事故により入院したり怪我のために家事が十分にできなかった場合、家事ができなかった期間・程度に応じて休業損害を請求できます。

 

 

Q  交通事故により持病の腰痛がひどくなりました。このような場合でも損害賠償を請求できますか?

 

A  できます。ただし、どの範囲が交通事故による損害かという点が争いになる場合があります。

 

 

Q 交通事故に遭って私の車が損壊したので修理に出すことになりました。修理期間中の代車使用料を加害者に請求することはできますか?

 

A 事故により代車を使用する必要性があり、実際に代車を利用した場合には請求することができます。。

しかし、一般的には、修理期間として通常必要な期間の分しか認められません(2週間〜1か月程度)ので、早めに修理に出して修理が完了すれば代車を返還すべきです。

 

 

Q 交通事故の過失割合は保険会社が決めるのですか?

 

A 保険会社には過失割合を決める権利はありません。過失割合を誰が決めるかというと,まずは当事者が交渉して決めます。一般的には当事者の代わりに保険会社が交渉するので、保険会社が「提案」することが多いのです。

そして、当事者同士で合意できなければ、裁判所が決めることになります。

裁判所はどうやって決めるのかというと,事故当時の道路状況,交通量の状況,見通しが良いか悪いか,事故に至った経緯,速度超過などの違反の有無等を総合して決めます。

このように,保険会社が提示する過失割合というのは,あくまで保険会社の「提案」に過ぎません。

 

 

Q 自動車損害賠償保障法にいう「運行」とは何ですか?

 

A自賠法では,「自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合」に保険金が出るとされています(自賠法1条)。

そして,「運行」とは,「人又は物を運送するとしないとにかかわらず,自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。」とされます(自賠法2条2項)。

この「運行」の解釈として、学説では複数の説がありますが、最高裁判例は固有装置説(走行装置だけでなく,クレーン車におけるクレーン等特殊自動車等に固有の装置を使用することも含む)を採用しています(昭和52年11月24日判決)。

したがって,サイドブレーキの緩み,走行停止中のクレーン車のクレーン操作,走行停止中のミキサー車のミキサーの回転等が原因による事故には自賠責保険の適用があります。

 

 

Q 交通事故における「信頼の原則」とはどのような原則ですか?

 

A 判例によると,信頼の原則とは「他の交通関与者が交通秩序に従った適切な行動を取ることを信頼するのが相当である場合には、その者の不適切な行動によって生じた交通事故について加害者たる交通関与者は責任を負わない」ものと説明されています。

具体的には,交通ルールに則って周りを注意して運転していても,相手が通常では予想できないような避けられないような動きをした場合には,過失がない(過失割合がゼロ)ということになります。

ここで,重要なのは,まず,基本的に自分が「交通ルールに則っていること」が必要です。

「急な飛び出しだから避けられなかった」と主張をしても,制限速度50キロメートルの道路なのに自車が70キロメートルを出していた場合,「制限速度を守っていたら避けることは可能だった」と認定される場合があります。

次に,相手が「通常では予想できない」動きをした場合に限られます。ここでいう「通常」とは,相手の属性によって異なります。

例えば,小さな子供が歩行していた場合,子供は不用意に車道にはみ出すことが「通常」あり得ます。

このような場合,「子供が飛び出すはずはないと思った。」と言っても通用しません(過失はゼロにはなりません)。

このように,「信頼の原則」があるといっても,ドライバーには常に慎重な運転が要求されていますのでご注意ください。