遺言・相続Q&A


Q  父親が亡くなりました。父親名義の不動産が複数あるのですが、どのように分けたらいいのでしょうか?

 

A  遺産分割には、現物分割、換価分割、代償分割などがあります。

 現物分割とは、例えば不動産Aを長男が取得し、不動産Bを次男が取得するという具合です。

 換価分割とは、現物分割が困難な場合に不動産を金銭に換価して分ける方法です。

 代償分割とは、例えば、長男が不動産を全て取得する代わりに、一定の金銭を次男に渡すなどの方法です。

 具体的な分割方法については相続人間で協議して決めることになります。協議が整わない場合には家庭裁判所で調停を行うことになります。 

 

 

 

Q  父親が亡くなりました。遺言があるのですが、勝手に開けてもいいのでしょうか?

 

A  いいえ。勝手に開けてはいけません。「検認手続」といって家庭裁判所で開封する手続が必要です(但し、公正証書遺言は別)。

 

 

 

Q  養子には相続する権利はないのですか?

 

A  養子であっても相続する権利はあります。法律上、養子は「嫡出子の身分を取得する」(民法809条)からです。

 

 

 

Q  愛人の子にも相続する権利があるのですか?

 

A  愛人の子であっても、父親が認知していた場合には相続する権利があります。
 そして、この場合の相続分は、以前は夫婦間の子供の相続割合の半分とされていましたが(旧民法900条4号但し書き)、平成25年9月4日の最高裁判決を受けて法律が改正され、夫婦間の子供と同等の割合となりました。

 

 

 

Q  内縁の妻は相続する権利はないのですか?

 

A  内縁の妻には相続する権利はありません。

 

 

 

Q  父親が死亡しました。私の家族は、母親(父の配偶者)と私たち兄弟(父から見たら子)2人です。ところが、戸籍を見てみたら父親が認知した子がいるようです。その人とは一切連絡を取ったこともありません。そんな人は無視して、私たち3人で父親の財産を分けてもいいのでしょうか?

 

A  それはできません。付き合いがなくても戸籍上認知されていれば父親から見れば法律上の子です。法律上は相続人として扱われますので無視することはできません。

 ですから,その人も含めて遺産分割の話し合いをする必要があります。その人に手紙を出すなどして父親の死亡を知らせて遺産分割の話を進めるべきです。

 居場所が不明な場合は不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きが必要になります。

 

 

 

Q  父親が死亡しました。父親の財産といえば、自宅の不動産とわずかな預金がある程度です。むしろ、事業をしていた関係で銀行から多額の借入金があります。銀行からの借入金は相続の対象にはならないのでしょうか?

 

A  相続の対象になります。ですから、自宅不動産と預金の合計額(プラスの財産)と借入金の額(マイナスの財産)を比べてみる必要があります。

 プラスの財産のほうが大きければ相続する意味がありますが、マイナスの財産のほうが大きければ相続する意味は原則としてありません。

 このような場合は「相続放棄」という手続きをすることによって借入金債務を相続しなくて済みます。ただし、「相続放棄」をするとプラスの財産も相続できません。

 

 

 

Q  遺産分割調停とは何ですか?

 

A  遺産分割調停とは、相続人が家庭裁判所で調停委員を交えて遺産の分け方について話し合うことです。相続人同士で遺産の分け方について話し合いがつけば調停を行う必要はありません。

 話し合いがもつれた場合に調停をすることになります。調停では2人の調停委員が間に入って話を調整してくれます。

 調停でうまく話がまとまれば「調停調書」というものを作成して解決します。話し合いがまとまらない場合は、裁判官が「審判」をして決着を付けることになります。

 

 

 

Q  代襲相続とは何ですか?

 

A  例えば、ある夫婦がいて夫が死亡したとします。この夫婦には元々娘が2人いたのですが、長女は結婚して子供を産んだ後に亡くなっていたとします。次女は健在とします。

 この場合、本来であれば(長女が生存していれば)、配偶者である妻と2人の娘が法定相続人となるところ、長女が既に死亡しているため、長女の代わりに長女の子供が法定相続人になります。

 したがって、この場合の法定相続人は、妻、長女の子供、次女、の3人となります。このように、本来の相続人が死亡しているために次の代が相続人になることを代襲相続といいます。

 

 

 

Q  特別受益とは何ですか?

 

A  特別受益とは,共同相続人の中に,被相続人から遺贈を受けたり,生前贈与を受けたりした者がいる場合に,相続人間の公平を図る制度です。

 具体的には,結婚の際の持参金,住宅購入資金,高額な教育費,事業の開業費などをもらっていた場合に,計算上もらった額を相続財産に含めて相続分を算定します。

 その結果,特別受益を受けていた相続人が遺産から受け取る相続分は他の相続人に比べて少なくなります。

 

 

 

Q  寄与分とは何ですか?

 

A  寄与分とは,共同相続人中に,被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者がいる場合に相続人間の公平をはかるための制度です。

 具体的には,相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し,算定された相続分に寄与分を加えた額がその人の相続分となります。

 結果的に,他の相続人より多く相続財産を取得することができます。

 

 

 

Q  遺留分とは何ですか?

 

A  遺留分とは,被相続人が有していた相続財産について,その一定の割合を一定の法定相続人に保障する制度です。

 遺留分権利者は,遺留分を侵害する行為に対して減殺請求をすることによって保障された一定割合を確保することができます。

 

 

 

Q 未成年者がいる場合の遺産分割はどうするのですか?

 

A 未成年者は単独で法律行為を行うことはできません(民法5条1項)。

 よって,法定代理人が代理するか同意することが必要です。 

 遺産分割協議も法律行為ですので,未成年の子は遺産分割協議に参加できません。

 このような場合,一般的には親権者が相続手続を行います。 

 ただし,未成年者とその親権者が共に相続人である場合,親権者が遺産を多く取得すれば子どもの取得分が少なくなるという関係になります。このような場合のことを利益相反といいます。 

 利益相反が生じる場合,親権者は未成年者のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。

 特別代理人とは法律行為を行うことができない人に代わって法律行為を行う人のことです。 

そして,家庭裁判所から選任された特別代理人が未成年者の相続手続を行うことになります。

 

 

 

Q 遺言の内容と異なる遺産分割は可能ですか?

 

A 遺言があっても遺言執行者がいない場合には,相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意があれば,遺言と異なる遺産分割をすることが可能です(熊本地裁昭和30年1月11日判決等)。 

遺言執行者がある場合,遺言執行者及び相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む)の同意がある場合に,遺言と異なる遺産分割を有効とした裁判例があります(東京地裁昭和63年5月31日判決)。

 

 

 

Q 祭祀承継者とは何ですか?

 

A 祭祀承継者とは,系譜,祭具及び墳墓等の祭祀財産を承継する者をいいます(民法897条)。 

 「系譜」とは,歴代の家長を中心に祖先伝来の家計を表示するものをいいます。
 「祭具」とは,祖先の祭祀や礼拝の用に供されるもので,仏壇・神棚・位牌・霊位・十字架などをいいます。
 「墳墓」とは,遺体や遺骨を葬っている土地に付着した設備で,墓石・墓碑などの墓標や土倉の場合の埋棺などをいいます。 

 なお,遺骨についても祭祀主宰者に帰属するというのが判例です。 

 祭祀承継は,遺産相続とは別のものと考えられており,祭祀財産は相続財産には算入されません。 

 祭祀承継者の決定は,第1に被相続人の指定により,第2に慣習により,第3に家庭裁判所が定めることとされています(民法897条)。 

 家庭裁判所が祭祀承継者を定める場合の基準としては,承継者と相続人との身分関係のほか,過去の生活関係及び生活感情の緊密度,承継者の祭祀主催の意思や能力,利害関係人の意見等諸般の事情を総合して判断するものと考えられています(大阪高裁昭和59年10月15日決定)。

 

 

 

Q 父親が失踪して何年も経つのですが,父親の相続はいつまでもできないのでしょうか?

 

A 現在の民法においては,相続が開始するのは被相続人が死亡したときです(民法882条)。

ですから,原則として人が死亡するまで相続は開始しません。 

 ただし,ある人が失踪して,生きているか死んでいるかわからないような場合,失踪宣告という方法があります。 

 不在者の生死が7年以上明らかでない場合,家庭裁判所は関係者の請求に基づき失踪宣告をすることができます(民法30条)。 

 家庭裁判所による失踪宣告がなされると,失踪期間の満了後にその人は死亡したとみなされ(民法31条),その結果,その人について相続が開始することになります。

 

 

 

Q 被相続人の金融機関の取引履歴は相続人全員の署名と押印がないと請求できないのですか?

 

A 被相続人の預金口座の取引履歴に関しては,従来,金融機関は相続人全員の請求がない限り開示に応じませんでした。

 しかし,平成21年1月22日の最高裁判決は,「金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(民法264条,252条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」と述べ,共同相続人のうちの一人が単独で預金口座の取引履歴を請求することを認めました。 

 これを受けて,銀行実務も,共同相続人の一人による取引履歴の開示請求を認めるようになりました。 

 

 

 

Q 相続開始後,遺産分割協議ないし調停もしくは審判が行われて,遺産の帰属が最終的に確定したときに,当該不動産を取得することになった相続人は,相続開始時まで遡って当該不動産の全部の賃料を取得できますか?

 

A 最高裁平成17年9月8日判決は,遺産分割が確定するまでは,法定相続分に従って各相続人に帰属し,遺産分割確定以降は当該不動産を取得した相続人に帰属すると判断しました。

 

 

 

 

Q 生命保険金は特別受益になりますか?

 

A まず,生命保険金は遺産には含まれません。生命保険金が遺産に含まれないとすると,特定の相続人が多く生命保険をもらう場合には,各相続人間で受け取る金銭について差がでてきます。そのため,生命保険金は特別受益ではないかという問題が出てきます。

 この点,実務では,原則として生命保険金は特別受益として扱われません。

 もっとも,相続人間の不公平が著しい場合には,特別受益としての考慮する場合があります。具体的には「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には民法903条の「類推適用」により「特別受益に準じて持戻しの対象となる」とされています(最高裁平成16年10月29日判決)。 

 そして,不公平が著しいかどうかについては,「保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」(上記判例)とされています。

 

 

 

Q 私には相続人として妻と子ども3人がいます。遺言書に「私の財産は全て妻である○○に相続させる。但し,妻が死亡した後,妻が私から相続した財産は長男の○○がすべて相続するものとする。」と書いた場合,このような遺言は有効なのでしょうか。

 

A このような遺言は「後継ぎ遺言」と言われますが,一般的には無効だと考えられています。

なぜなら,遺言で財産を取得した人は,その取得した財産を自由に処分できることになるので,その方が亡くなった後のことについてまで決めることはできないからです。

 

 

 

Q 民法改正で自筆証書遺言制度が改正されたと聞きましたが,どのような改正ですか?

 

A まず,現行制度では,自筆証書遺言は,文字どおり自筆(手書き)する必要があるのですが,本文だけでなく,日付も署名も財産目録も全て自筆する必要があります(民法968条1項)。

特に財産の多い方にとっては財産目録を手書きするのはかなり大変なことです。

 

 改正後は,財産目録の部分については自筆しなくてもよくなりました。例えばパソコンなどで作成してもOKです(改正民法968条2項)。
ただし,パソコンなどで作成した財産目録には全てのページに自署と押印が必要です。

 

 そして,基本的に改正民法の施行日は,2019年7月1日なのですが,例外的に上記自筆証書の部分の改正は,「公布日から起算して6か月を経過した日」とされていますので,既に2019年1月13日に施行されました。

 

 次に,自筆証書遺言についての保管制度ができました。

 

 これまでは特に保管制度はなく,自筆証書遺言については,自宅で保管したり知人に預けたりしていました。

 

 改正法では,法務局において遺言書を保管する制度が創設されました。この部分は民法ではなく,「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下,「遺言書保管法」といいます。)という別の法律で定めました。

 

 遺言書保管法によると,遺言者は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対して,遺言の保管申請を行うことができます(遺言書保管法4条3項)。

 

 さらに,遺言書保管法の手続によって保管された自筆証書遺言については,検認手続をする必要がなくなりました(遺言書保管法11条)。

 

 ただし,遺言書保管法の施行日は2020年7月10日ですので,注意してください(施行前には遺言書の保管を申請できません。)。

 

 

 

Q 改正民法で,夫婦間の居住用不動産の贈与に関する規定が新設されたと聞きましたが,どのような制度でしょうか?

 

A 現行制度では,「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」を受けた場合,それを「特別受益」として扱い,相続分を算定するときに考慮します(民法903条1項)。

つまり,簡単にいうと,配偶者が生前に居住用不動産の贈与を受けていた場合,遺産分割で取得する遺産は少なくなります。

 「特別受益」の制度は,生前贈与は遺産分けの「先渡し」であるという考え方が背景にあります。

 遺産を生前に先にもらっているのだから,死後の遺産分けは少なくてもよいという考え方なのです。

 

 しかし,実際には,居住用不動産の生前贈与は,配偶者の生活保障のために行われている場合が多いと思われます。

 そして,その旨の意思表示をしていれば,現行法においても,「特別受益の持戻し免除の意思表示」(民法903条3項)となり,死後の遺産分けにおいて,少なくされることはありません。

 もっとも,このような意思表示をする人は少ないため,「持戻し免除の意思表示」が認定されることは稀です。

 

 そこで,改正法では,一定の条件を満たす場合(婚姻期間が20年以上で居住用不動産の贈与),配偶者への贈与は,「持ち戻し免除の意思表示」が推定されることにしたのです(改正民法903条4項)。

 その結果,配偶者は,居住用不動産をもらったことを前提として,被相続人死亡時に残っている遺産について,法定相続分に従って取得することができます。

 

 ただし,本規定は,被相続人の意思表示の推定規定であるため,被相続人がで反対の意思表示をしていた場合には適用されません。

 

 

 

Q 改正民法で新設された「預貯金の仮払い制度」とは何ですか?

 

A 現行制度の場合,遺産分割協議が完了する前に預貯金の払戻しを受けるには,相続人全員の合意が必要です。

 

 改正民法では,遺産分割協議が完了する前でも,相続人が単独で預貯金の払戻しができる制度を新設しました(改正民法909条の2)。新しい制度によると,各相続人が単独で,金融機関に対して,「相続開始時の預貯金の額×1/3×当該相続人の法定相続分(ただし,金融機関ごとの上限を150万円とする)」の払戻しを請求できます。