連帯保証債務の相続に注意

相続財産にはプラスの財産もマイナスの財産も含まれます(民法896条「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」)。


マイナスの財産とは典型的には借金です。

 

相続が起こったときには「プラスの財産とマイナスの財産を検討してマイナスの財産が多い場合は相続放棄をしましょう」というのはよく聞く話です。

 

親など近い親族が亡くなった場合、借金の存在は簡単に気づくことが多いです。普段から消費者金融の督促状が来ているとか、収入の額に見合わないほどギャンブルにのめり込んでいるなどの様子があれば、だいたい分かります。

 

しかし、連帯保証債務には注意が必要です。

 

例えば、長男が自宅を購入する際に住宅ローンを組み、父親が連帯保証人になったケースを考えてみましょう。


この場合、当然、長男はその事実を知っていますが、他のきょうだい(例えば二男)には知らされていないことがあります。

 

そのような場合でも、長男が順調に住宅ローンを支払っていれば父親の出番はなく、長男がローンを完済すれば父親の責任は何も残りません。

 

問題は、長男が住宅ローンの支払いを遅滞した場合です。

 

もし、父親が生存中であれば、債権者(銀行など)は父親に対してローンの支払いを請求します。

 

そうなると、家族の中でその件について話し合いが行われたりして、父親が連帯保証人であるという事実が顕在化します。

 

しかし、長男が順調に住宅ローンを支払っている最中に父親が亡くなり、その後相当期間が経過してから長男の住宅ローンの支払いが遅滞し、父親の連帯保証債務が顕在化することがあります。

 

その場合、突然、債権者から二男に対し「お兄様の住宅ローンの支払いが滞っています。亡くなられたお父様はお兄様の連帯保証人でしたので、あなたはお父様の連帯保証債務を相続しています。ですから支払ってください。」という通知が来ることになります。

 

そのような通知が来た場合には、相続放棄も視野に入れて検討しましょう。


もちろん、プラスの財産とマイナスの財産を比較してから結論を出すべきです。


そして、父親の死亡から3か月以上が経過している場合には慎重に手続きを進めるべきであり、専門家に相談することをお勧めします。