バイト欠勤で罰金

最近,立て続けにコンビニで「欠勤による罰金」が話題になりました。

 

 

一つは東京で,今年1月にニュースになりました。

もう一つは名古屋で,今年2月にニュースになりました。

 

 

東京の事案は,女子高校生のアルバイト店員が風邪で2日間(計10時間)欠勤したということで,1か月で25時間勤務したのに,「ペナルティ」として10時間分の給料を差し引いていました。

 

 

名古屋の事案は,「急に欠勤したら1回1万円の罰金を徴収する」という内容の書類に署名させて,実際,1人のアルバイトに3回の遅刻を理由に計3万円を払わせた,という容疑で加盟店のオーナーらが書類送検されました。

 

 

いずれも,コンビニの加盟店が欠勤や遅刻を理由に従業員に対してペナルティを課したものですが,このようなことは法律的に許されるのでしょうか。

 

 

労働基準法の問題です。

 

 

遅刻や早退を繰り返すとか無断欠勤など,勤務態度に問題がある場合には,懲戒処分としての「減給」を定めることが許される場合があります。

 

 

ただし,懲戒処分としての「減給」は,就業規則で定める必要があります。

「こういう場合にはこういう懲戒を与えますよ」ということをきちんと就業規則で規定しておかなければなりません。

 

 

そして,懲戒処分として減給する場合,その額は,最大でも,1回の減給の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならず,かつ,減給総額は1回に支払われる給料の10分の1を超えてはならないと決められています(労働基準法第91条)。

 

 

したがって,東京の事案では,まず,就業規則で定めていないにもかかわらず(報道では明らかではありませんが,おそらく)減給した点で違法です。

 

 

そして,本来もらえるはずの給料が2万3000円程度(25時間分)であるところ,1万円近く(10時間分)「減給」されているので,減給の額についても違法です。

 

 

さて,名古屋の事案では,勝手に減給したのではなく,「急に欠勤したら1回1万円の罰金を徴収する」という内容の書類に署名させていたとのことです。

これならいいのでしょうか。

 

 

この点については,労働基準法は「賠償予定の禁止」を定めています(16条)。つまり,会社(使用者)は「こういうことをしたら違約金幾らですよ」という取り決めを従業員と交わしてはいけないということです。

 

 

この規定は,もともとは,戦前に,「仕事を辞めたら違約金を払う」という取り決めをしておいて,過酷な労働を無理強いさせられていたことがあったことから,労働者を守るために作られた規定です。

 

 

名古屋の事案では,この「賠償予定の禁止」に違反したために書類送検されました。