IR整備推進法成立

昨年12月,カジノ法ともいわれる「統合型リゾート施設整備推進法」が成立しました。

もっとも,この法律で決まったことは「統合型リゾート施設の整備を進めることにする」ということだけであり,政府が1年以内を目処に具体策を定めた法律案を作ることになっています。

 

 

この法律については賛否両論(世論調査では反対の方が多いようです)ですが,法律的観点から検討したいと思います。

 

 

まず,法律は国会で作るものであり,今回,国会で法律が成立したのですから,憲法に違反しない限り「法律問題」ではないともいえます。

 

 

ただし,刑法という重要な法律では「賭博」が禁止されており,刑罰も定められていますから,「この法律は刑法との関係でどう考えたらよいのだろうか」という疑問が湧いてきます。

 

 

まず,そもそも,なぜ賭博は法律で禁止されているのでしょうか。

 

 

最高裁は,このように述べています。

「国民をして怠惰浪費の弊風を生じさせ,健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風(憲法27条1項参照)を損なうばかりでなく,甚だしきは暴行,脅迫,強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える虞すらある」(最高裁昭和25年11月22日判決)

 

 

つまり,「国民が賭博に夢中になって働かなくなったら困る」「イカサマ賭博などで喧嘩がおきたり,お金欲しさに強盗に走ったりしたら困る」ということのようです。

 

 

では,公営ギャンブルはなぜ許されるのでしょうか。

 

 

この点については,昭和40年4月6日の東京高裁判決では,「公共機関の厳重,公正な規制のもとにおける射幸心の発露は害悪を比較的些少にとどめ得る」と述べられています。

 

 

つまり,公的な機関が運営することで,不正が防止できるし,ギャンブル依存症になったりする人は少ないだろうから大丈夫だ,と言っているんです。

 

 

しかし,実際はどうでしょうか。ギャンブル依存症は社会問題になっています。

 

 

果たして,カジノはギャンブル依存症を増やしてしまわないのか,公的な機関が運営するのか(公的機関ではノウハウがないのでできないのではないかとの指摘もあります。)など,今後策定される具体的な法律の中身が重要になります。