遺留分について

遺留分とは,被相続人が有していた相続財産について,その一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です。

 

 

具体的に見ていきましょう。

例えば,遺言で二人の子供のうち,「長男だけに全財産をあげる」と書いた場合,他の子供の遺留分を侵害することになります。

「遺留分を侵害する」とはどういうことでしょうか。

 

 

まず,遺留分の割合というものが民法で決められています。

つまり,遺言によっても侵害できない相続分の割合です。

子供が二人の場合,配偶者がいないとすると,一人につき遺産の4分の1が遺留分割合となります。

遺産のうち4分の1は最低限与えてあげようというのが法律の考え方です。

 

 

そうすると,先の例で,遺言で「100%長男に与える」と書いてあっても,4分の1は次男に権利があります。

 

 

問題は,この場合の処理の方法です。

次男は黙っていては4分の1を取得できません。

「遺留分減殺請求」というのを行わなければなりません。権利を行使しなければ4分の1を取得できないのです。

 

 

なぜ,こういう制度になっているかというと,次男が,「オヤジの遺志だから異議は唱えたくない」と考えて遺言を尊重する場合もあるので,そういう場合まで,強制的に4分の1を与えなくてもいいだろう,という考え方が背景にあります。

 

 

ですから,「4分の1欲しい」という場合は,自分で行動を起こす必要があります。

具体的には,口頭または書面で(通常は書面がいいでしょう),長男に遺留分減殺請求の意思表示をします。

これだけで権利関係としては,4分の1を手に入れたことになります。

 

 

「なんだ簡単じゃないか」と思われるかもしれませんが,実はこれだけでは終わりません。

この時点では「4分の1」という「割合」を手に入れただけですので,実際に遺産をどのように分けるかについては,相続人間で協議をしたり,場合によっては調停や訴訟を行う必要があります。

 

 

このように,遺留分を侵害する形の遺言を作成してしまうと,後で,協議等の必要が生じますので,残された家族の間で紛争が起きる可能性があります。

遺言を作成する場合は遺留分に注意して,できれば,遺留分を侵害しない遺言を作成することが望ましいと言えます。