証拠について

 今回は「証拠」について書いてみたいと思います。

 

 

 「証拠」とは何でしょうか?

 よく推理小説などで、「俺が犯人だという証拠でもあるのか?」という台詞が出てきますよね。推理小説の場合、たいてい決定的な証拠が用意されています。誰がみても一目瞭然というものです。

 

 

 実際の裁判ではどうでしょうか?一目瞭然の証拠があるというケースは余りありません。そんなものを持っていたら、はっきりしすぎていて普通裁判にまでなりません。たいてい微妙だから争いになるのです。ですから、実際の裁判で出てくる証拠で決定的なものは少ないです。

 

 

 では、どういうものが「証拠」になるのでしょうか?

 契約関係でもめた場合、まず、契約書は一つの証拠ですね。納品書とか請求書とか領収書とかも証拠です。銀行口座の出入金記録、メールのやりとりなども重要な証拠になる場合があります。

 

 

 ところで、よく、「やっぱり証拠がないとダメですか?」と聞かれることがあります。確かに証拠がなければダメです。しかし、決定的な証拠でなくても情況証拠も証拠です。

 例えば、その当時おかれていた状況、立場なども立派な証拠です。「このような立場であればこういう行動に出るはずがない」「こういう状況だったのだから、こういう行動に出ても不思議ではない」という風に使います。

 もちろん、「不思議ではない」という程度では駄目なんですが、そういうものを多く積み重ねれば勝訴できる場合があります。

 

 

 実は法廷での尋問も証拠です。質問に対してどう答えるか、答え方に不自然さはないか、そういうことを裁判官は観察しています。そして、十分信用できるとなれば、本人(あるいは証人)が述べたことは立派な証拠になります(もっとも、本人の言うことが信用されにくいことは前回書いたとおりです)。

 

 

 このように、「証拠」と言ってもいろいろなものがあります。

 「証拠がないからどうせ無理だろう」と思っていても、専門家が見れば、「立派な証拠があるじゃないか!」という場合もありますので、無理だと思っても一度専門家に相談してみることは損ではないと思います。